鋼鐵塚蛍が嫁を取ったらしい【鬼滅の刃】

二十四 ページ25

『…ん』

目が覚めると、日が昇っていた。
いつもの朝…なはずなのだが、なんだか違う気がした。


Aは先に起きていた。

「おはよう、蛍くん。大丈夫？」

『あ？』

おたふくの面が傾く。

「いや、昨日 気絶してたけど」

…待て、思い出してきた。
が、なんかすごい思い出したくない。


『…』

気付けば顔を手で覆っている。

頭痛さえしてきた。

「気にしなくてもいいよ。初めてだったもの」

『慰めとかいらねぇんだよ！』

Aのせいだ。

遠慮しないで とか、期待してた とか言いやがったから。
あんな顔で、あんな声で。

頭が破裂したんだ。


「仕方ない仕方ない、そりゃ鼻血出して倒れるよ」

『だあぁっ、言うな！それ以上言うな殴るぞ！』

「痛っ、もう殴ってるし…」

Aと居ると、色々と上手くいかない気がする。

「それより、夕食抜いたからお腹減ってるでしょう。
朝餉たくさん作ったから、食べよう？」


でも、Aと居ると落ち着く。
ひどく落ち着かない時もあるが、それでも嫌悪感は抱かない。

なんなんだ、俺が俺じゃないみたいだ。



ーーーーー
『いただきます』

自分の口に食べ物を入れる。

次は蛍くんの口に食べ物を運ぶ。

こういう生活もすっかり慣れてきたあたりで、
蛍くんの手は治りかけだった。

お面も明日には元通りだろう。

『…そろそろ自分の手で食べ出してもいいかな』

「ん」


それにしても昨日はびっくりしたなぁ。
いきなり鼻から血を出して気絶するんだもの。

覚悟決めてたのに…

『…ふふ』

思い出して笑ってしまう私を蛍くんは見逃さない。

「何笑ってんだよ」

『いや、なんでもない』

そう言いつつも私の口角は上がりっぱなしだ。

ごめん、今思うとだいぶ面白くて。


でも人のこと言えないか。私がああなってもおかしくない。
…それは困る！

「…おかわり」

蛍くんはがつがつとご飯をかき込んでお茶碗をつき出す。
受け取って、台所に向かう。

この結婚の本来の目的は蛍くんの後継ぎだ。

鉄珍様が言っていたじゃないか。


『はい』

「ん」

白米のこんもり盛られたお茶碗を机に置く。

子供を産むというのがどれほどなのか分からないが
歳を重ねれば苦しくなるのは分かる。


そう考えると時間もない…

鉄珍様にどつかれる！

『ひえぇっ』

「どうしたんだよ」

『いや、なんでもない…』

「騒がしい奴だな」


私の内なる怯えなど知るはずもなく
蛍くんは眉根をひそめた。

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