鋼鐵塚蛍が嫁を取ったらしい【鬼滅の刃】

二十一 ページ22

ということで、常にストレス状態の蛍くん。
鋼鐵塚家ではここしばらく緊迫した日々が続いていた。


「うぅ〜…」

獣のように唸る蛍くん。

『もう少しの辛抱だから、ね』

蛍くんは最近刀を打てていない。
それは彼にとっては生き甲斐を奪われているということだ。

『お面の修繕はもうすぐで終わるし』

それにしても、あの手といいお面といいこのままじゃどうなっていたことか。
これだからほっとけないというか…



「ふぅーっ…」

鼻息も荒く、凛々しい目をかっ開いている。
まさに鬼の形相。

『もうすぐだから。あと三日ってところかしら』

「三日ァ！？待てるか！」

人生は我慢することばっかりよ。頑張れ、鋼鐵塚蛍三十七歳。


「…おい、A」

『うん？』

「寄れ、面取って」

険しい表情だ。
にらめっこでもする気だろうか。


少しばかり距離を詰める。
と、蛍くんにじっと見つめられている。

『なんでしょう蛍様』


冗談混じりに恭しく言うと、片手で顎を掴まれた。

『んぅ…』

蛍くんはきりっとした顔をしているがこれは生来の顔立ちであって、実際のところ何も考えていない表情だ。


すると、ぐい、と顔が近づく。
蛍くんは少し頭を傾けて…

…え、待って、このままじゃ。



「…っつう」

ほとんど反射的に蛍くんを突き飛ばした。

『あ、ごめん…』

「ごめんじゃねえよ、何しやがんだ！」

『い、いや、蛍くんこそ何を』

蛍くんは珍しく弱気な顔になる。
が、すぐに堂々と言い放った。


「…なんかすごい、滾った」

『…』

何が、とは聞けない。

大方 刀を打ちたい欲が変な方向に行ってしまったのだろう。
それにしても蛍くんにそういう思考が存在するとは。

返す言葉に悩んでいると、両肩をがしっと掴まれる。

…あれ、顔が熱い。


「A、抱かせろ」


『だっ…』

抱かせろって、そういうことか。
そういうあれか。


…いや、何これ、どうするの？

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