鋼鐵塚蛍が嫁を取ったらしい【鬼滅の刃】

十五.色変わりの刀 ページ16

「…おい、聞いているのか」

『聞いてるよ』

さっきから多分小一時間刀の話をされている。
私も分からなくはないのだが、蛍くんはとにかく話が長い。

めんどい。くどい。


「その顔は、聞いてねえ顔だ」

またこの言い草。

『聞いてるわよ』

私も一応刀鍛冶の里の人間だ。

刀に興味がないわけではないし。

とはいえ、作り方なんかは分からない。
この里で刀を打つのは、男性だけだ。


「…鱗滝のところの弟子が選別から帰ったらしい」

『あら』

鬼殺の剣士が増えるということだ。
蛍くんはその刀を任されたのだと言う。

『なるほど』

それは気合が入る。

「…行くか」

『え？』

「刀を使い手の元に届け、その色を見届ける…それが刀鍛冶の役目だ」

鬼殺隊の刀は「色変わりの刀」とも呼ばれており
持ち主によって色が変わるのだという。

それが呼吸なんかを示しているわけである。


『私も行っていい？』

「…あぁ」

『ありがとう…そうだ』

里の外に出るのなら、あれを持って行こう。


「なんだ、それは」

笠だ。頭に被る笠。
その周りには風鈴を付けてある。

『蛍くん専用特製笠。好きな風鈴の音がいつでも聴けるのよ』

「宴会じゃないんだぞ」

露骨に嫌な顔をされる。

『うーん、いい出来だと思うんだけど。
風鈴は魔除けにもなるしね。これくらい付けておけば鬼にも襲われないでしょ』

蛍くんは笠を手に取りまじまじと見る。


そして、頭に被った。

一見すると滑稽だが、どこか非現実的な趣がある。
少し動かすたびにちりんと音が鳴る。

「…仕方ねえな」

そう言って被ったまま立ち上がる。
気に入ったのならそう言えばいいのに。






鬼狩りの少年は変わった出立ちの私たちを見て少し驚いたようだった。

蛍くんはと言えば、
「お前、赫灼の子じゃねえか。こりゃあ縁起がいいな」
とか言って少年の顔をまじまじ見ている。

『蛍くん、馴れ馴れしい』

蛍くんは聞く耳持たず少年の頬をぐりぐりしだす。

『こら』

頭をはたく。
全く、人ん家で何をしてるんだか。

『ごめんなさいね。
彼は刀鍛冶の鋼鐵塚蛍。私は妻のAと申します』

「そうですか。わざわざご足労ありがとうございます」

少年は笑った。素直でいい子だ。
蛍くんもこうだったらよかったのに。

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