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「あれ?兄さんは遠征中やとして…チーノとペ神は?」
ゾムさんは医務室に入って来た10人の人の顔を見て言う｡
「チーノは北側にH国の兵士がいるっていう報告でチノーンで索敵しとる」
ゾムさんの質問に“天”という紙を顔に貼り付けた人は言った｡
「しんぺいさんは見てませんね」
白目の人が言う｡
一体この国の幹部とは何人居るのだろうか｡
「あいつが居っても掘られるだけやろってww」
黄色のニット帽の人が笑いながら言っている｡
「掘られる…?」
私はその人の言った意味が分からず口に出る｡
この状況に関しては分からなすぎて思考放棄したけど｡
「おいシャオロン｡こいつに変な事教えんなや」
ゾムさんはニット帽の人にキレ気味で言った｡
「じょーだんやってwじy「シャオロン君??」
ニット帽の人が何か言った時､“神”と書かれた紙を貼り付けた人が､後ろから顔を出して言った｡
その人が出て来ると騒いでいた他の人が完全に静かになった｡
「ゾ､ゾムさん…どういう事なんですか…?私は､どうしたら…?」
つい私はゾムさんに聞いた｡
不安な気持ちだけが込み上げてきて止まらない｡
「…はよ言え､ゾム｡記憶が無いっていうのはな､どんな恐怖より怖いんや」
先程出てきた､黒い紙を貼り付けた人は真面目な声で言った｡
その言葉で場に変な緊張が走った様に思えた｡
私は何が何だかとしか言いようが無い｡
けれど彼の言う“どんな恐怖よりも怖い”というのは何処か分かる気がした｡
彼は続けて言う｡
「ゾムはその子に何を思ってるんや?」
暫く誰も何も言わず､窓から通ってきた風の音だけが聞こえる｡
「………この子を俺の妹にする」
そう言ったのはゾムさんだった｡
幹部様は驚いた顔をしている｡
私も意味が分からず固まる｡
なのにゾムさんは私の頭に優しく手を置き前を向いていた｡
「勝手に事を運んでしもうて申し訳無いんやけど…なぁ､記憶が無いんやろ?名前…付けてもええか?」
沈黙が続く中ゾムさんは私に顔を向けて言った｡
寂しそうな眼差しで｡
「…私はゾムさんの妹になりたい…です」
それは私の口から自然と溢れた本音だった｡
ゾムさんも
ゾムさんもきっと私を守ってくれる｡
私はゾムさんの妹になりたい｡
「…じゃあお前は今日から――ヤーデ｡“ヤーデ・デアレッヒャー”や」
ゾムさん―――ゾム兄は微笑んで言った｡
その時
「―――っ!駄目や!ゾムｯｯ!!!」
と､誰かが叫んだ｡
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作者名：アンバ | 作者ホームページ：ないと思ったか！……ないんですよねぇ
作成日時：2020年12月30日 20時
