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「お前名前は?見た事の無いやつやな」
俺は目の前で座り込んでいる彼女に聞く｡
明らかに我々国の者やない｡
そもそもこの辺りは村も無いし一般国民は国の避難所に居るはずや｡
ならばH国の?
「…判らない｡何も判らない」
彼女は何処か縋る声で言う｡
予想の斜め上の返答と反応に俺は少し戸惑った｡
「自分の名前､やで…?」
「わからない､わからないの…何も何もッ!!」
彼女は急に大きな声を出して…
そして
そして大粒の涙を流し始めた｡
彼女の翠色の右目､蒼色の左目が涙で淡く光っている｡
「……落ち着きぃや｡大丈夫や…」
俺は馬から降りて彼女の背中を擦りながら言った｡
言い続けた
言い続けな､アカン気がした｡
彼女の声は計り知れない恐怖に飲まれた声や｡
戦争で何かあったんやろか……
―――それともまた何か別の?
暫くすると彼女は俺の腕の中で寝たようやった｡
けれど寝ているのに涙は流れ続けている｡
よっぽど苦しいことがあったんやろか…?
あ､いけねー
これどうしよ…
えっと……インカムで取り敢えず報告して…保護でええよな｡
なんか身体の傷もエグい量やし…
「あ､ロボロ?あのなぁ…
〜〜〜〜〜
「ゾム?入ってええよー」
「ペ神!どうやった…?」
「うーん…身体の傷は量が多いね｡特に酷いのが痣､やな｡温湿布貼っとるから殆どは治る…よ」
何処か遠くを見るようにペ神は言った｡
「どうしたん?」
「余りにも酷いんよ…多分まだ11歳､にも関わらずこの痣の量｡それに記憶障害を起こしてて…嗚呼､悪い記憶を自らで閉じ込めるタイプの……この子に一体何が…」
「よっぽど酷い事があったんやな…ありがとな!」
「ちゃんと見張っとくんやで｡それが条件なんやから」
「了解!」
そう言葉を交わしてペ神と入れ替わりで医務室に俺は入った｡
戦争後直ぐの為､医務室には怪我を負った兵士達が数名居った｡
兵士達は幹部の俺が入って来たのに驚きつつ､我々国の敬礼をしている｡
俺らなんかに敬礼なんてええのにw
幹部なんて変態しか居らへんのやしww
とか色々考えとったら1番奥の彼女の居るベッドに着く｡
俺と同じ様な茶色の長い髪を広げ彼女は寝ていた｡
閉じられた目元には涙の跡が｡
昔の……妹にそっくりやな…
……重なって見えるだけか…
最後に会ったのなんか8年も前やし､小さかったしな…
そう思った俺の視界は滲んだ｡
見えにくい視界の中､彼女の頬に触れる｡
はよ目ぇ覚ますん…やで……
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作者名：アンバ | 作者ホームページ：ないと思ったか！……ないんですよねぇ
作成日時：2020年12月30日 20時
