3 ページ44
「んじゃ、トレーニングルームに行くとするか」
「おう」
三人で立ち上がる。
「あ、悪い。俺飲み物買ってくから、先行っとけよ」
「了解」
上杉と別れて、黒木と二人で歩き出した。
「……美門」
「ん？」
「お前、さっきの話で納得してないだろうな」
「……まぁね」
黒木はやっぱり、人を見抜く能力に長けている。
「櫻木の過去はよくわかった。櫻木を守るっていう上杉の意思もね。でも、守るって言ったって、あれは過保護すぎる。上杉自身の感情が含まれてるのがバレバレだ」
「ん、俺もそう思うよ。上杉先生はあれを口実にしてるけど、Aに対して恋愛的な感情を持ってる。しかも上杉自身は、それに気がついていない」
二人してちょっと笑ってしまう。
「櫻木の方はどうなの？」
「Aは上杉の気遣いを、全部幼なじみの延長って捉えてるんだろうね。だから、気づいてないはずだよ」
「櫻木ってもしかして……アーヤ並みの鈍感？」
俺は呆れたような声を出してしまう。
黒木は笑った。
「あぁ、そうかもな。他人のことはよく気づくけど、自分に関してはさっぱりだから」
「へぇ……いじり甲斐がありそうな二人だ」
「あんまりやらかして、上杉先生を怒らせるなよ？」
「上手くやるよ」
少しだけ、黒木が真面目な表情になって言った。
「俺は、上杉とAの関係に口を挟むつもりはないけど、あの二人はお互いの存在があって自分を保ててる部分が大きいだろうから、自分たちの気持ちに気付くのも、時間の問題だろうね」
「そうなったら、kz的にはどうするわけ？」
今のkzは、男女の性差なく、仲間としての関係であることが求められている。
これはアーヤが言い出したもので、俺たちはそれを承認しなければならなかった。
「アーヤは、kzの中の恋愛関係を嫌がるからな。でも、自分以外の女子の話なわけだし、成長には恋愛も必要だってことは、アーヤとも話しただろ。なるようになるさ」
「だといいけどね。ライバルが現れたりはしないわけ？」
「昔から二人はセットみたいに見られてたからね、そこに割り込むような奴はkzの中にはいないよ。まぁ、上杉もAも秀明では有名人だから、赤の他人が入ってくるかもしれないが」
黒木は上杉とAのこれからの関係を、過信しているように思える。
お互いの気持ち以前に、自分の気持ちにすら気づいていない鈍感な二人。
……これは、俺が一肌脱ごうかな。
作者のひとりごと(随時更新)
春編お付き合いありがとうございました！夏編は私が書きたかったお話てんこ盛りなので、なかなかまとまらずに苦戦中です……。気長にお待ちいただければ有り難く思います。それでは続編でお会いしましょう！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奈都(プロフ) - 涼宮美桜さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けるとやる気が出ます。師走の忙しい時期ですが、とにかく公開だけはしようと思っているのでお待ちください。 (2018年12月9日 21時) (
レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - 12月15日、絶対に夏編見ます！楽しみです！これからも、頑張って下さいね！ (2018年12月7日 16時) (レス) id: 73c1c90619 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 涼宮美桜さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。夏編がなかなか書き進まず、公開は遅くなってしまいそうなのですが、必ず完成させるのでもうしばらくお待ちいただければ嬉しく思います。 (2018年11月6日 22時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - とっても面白かったです！夏編も楽しみにしてます！！ (2018年11月5日 16時) (レス) id: 73c1c90619 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 志恵さん» コメントありがとうございます！春編まではとりあえず早めに更新できそうなので、頑張って進めたいと思っています。これからも読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。 (2018年9月30日 10時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奈都 | 作成日時：2018年8月10日 9時
