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「昨日の事情聴取の内容を、黒木、上杉から聞きたいんだが」
黒木くんと上杉くんは、目を合わせた。
上杉くんがじっと黒木くんを見つめて、黒木くんはそれに対して少し笑ったの。
それだけで、意思疎通を図ったみたい。
黒木くんの方が口を開いたんだ。
「大まかなことは、昨日Aとアーヤから聞いた通りだったよ」
まぁ、ほとんどAちゃんだったんだけれどね。
「杉山杏菜という女の子の母親が付き合っていた男が犯人。連れていた杏菜の存在が邪魔で誘拐したが、殺すつもりはなかったらしい」
「あんなところ、捜索されたらすぐ見つかるだろ。魔が差してやったってのか?馬鹿な奴だ」
確かに……。
それでAちゃんの心まで傷つけたんだもの、許せないよね。
「ふたりの女の子はそれぞれの両親が迎えに来て、事情を話されて帰っていったよ。それと、杉山杏菜の母親が、Aに謝りたいって言ってた」
男を見る目はないけど、そういう礼儀はあるんだね。
シングルマザーって大変だけど、杏菜ちゃんもしっかりした子だったから、ちゃんと育てられてるんだなぁって思ったし、お母さんも案外ちゃんとした人だったのかも。
「一応連絡先教えてもらったけど、どうするA?」
みんながAちゃんの方を向いて、その答えを待った。
Aちゃんは少し考えてから、こう言ったんだ。
「えっと、結構ですって伝えてくれる?手間かけさせるのも嫌だし、思い出したくもないから。お気持ちだけ受け取っておきますって」
「ん、了解」
Aちゃんの「思い出したくもない」って言葉が気にかかった。
表情や態度には出さないけれど、やっぱり辛かったよね。
あのとき何も動けなかった自分が、情けなく思えたの。
Aちゃんの言葉を聞いて、やっぱりみんなも再び心配したみたい。
「本当に無理してないのか?」
「結構ストレスきてるんじゃない?」
「カウンセリングとか、受けといた方がいいよ」
「大丈夫だよ!みんな過保護なんだから」
そう言って笑うけれど……。
Aちゃんといて感じるのは、よく「大丈夫」って言葉を使うってこと。
それはもう口癖みたいに。
そうやって自分で抱えすぎて、自分が大変なのに、それを一切人に見せないの。
だから、いつか倒れてしまいそうで怖くなる。
Aちゃん、私たちは仲間なんだよ。
頼っていいんだよ。
そう伝えたいけれど、その言葉は軽く言えるようなことじゃないから、言い出せないんだ。
作者のひとりごと(随時更新)
春編お付き合いありがとうございました!夏編は私が書きたかったお話てんこ盛りなので、なかなかまとまらずに苦戦中です……。気長にお待ちいただければ有り難く思います。それでは続編でお会いしましょう!
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奈都(プロフ) - 涼宮美桜さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるとやる気が出ます。師走の忙しい時期ですが、とにかく公開だけはしようと思っているのでお待ちください。 (2018年12月9日 21時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - 12月15日、絶対に夏編見ます!楽しみです!これからも、頑張って下さいね! (2018年12月7日 16時) (レス) id: 73c1c90619 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 涼宮美桜さん» ありがとうございます!とても嬉しいです。夏編がなかなか書き進まず、公開は遅くなってしまいそうなのですが、必ず完成させるのでもうしばらくお待ちいただければ嬉しく思います。 (2018年11月6日 22時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
涼宮美桜 - とっても面白かったです!夏編も楽しみにしてます!! (2018年11月5日 16時) (レス) id: 73c1c90619 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 志恵さん» コメントありがとうございます!春編まではとりあえず早めに更新できそうなので、頑張って進めたいと思っています。これからも読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。 (2018年9月30日 10時) (レス) id: 98247bbc9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2018年8月10日 9時