夏は輝く笑顔の季節【探偵チームkz事件ノート】

名前で【夢主】 ページ5

「さっきまで、美門くんの話してたんだよ」
「俺の悪口なんか話題にしてもつまんないでしょ」
「悪口じゃないってば」


少し笑いながら、私はさっきの彩ちゃんとの会話を話した。


「あんまり意識してなかったけど、みんなにツバサって呼ばれて嫌じゃないの？」
「別に、気にしてない」
「そっか、ならいいけど」

「……この際だから言うけどさ」


美門くんがこちらに視線を移す。
この際っていうのは……どの際なのかはよくわからないけど。


「そろそろ櫻木って呼ぶの嫌なんだけど」

「……は？」


思わずそんな声が出てしまった。
……どういうこと？


「kzの連中は、みんなお前のこと名前で呼んでるでしょ？俺にも名前で呼ばせてよ」
「……あぁ、そういうこと」


「もちろんいいよ」と、私は快く了承したんだ。


「俺一人だけ名字で呼んでると、なんか仲悪いみたいじゃん。ちょっと気にしてた」

「なにそれ、自分だけ彩ちゃんに名前で呼ばれてるのに？」

「それとこれとは、話が別」


彩ちゃんはkzのお姫様だもん。
そんな彩ちゃんに唯一名前で呼ばれてることは、特権なんだよね、たぶん。


「それと、もうひとつ」
「ん？」
「美門くんって呼ばれるの、なんとなく慣れなくてさ。呼び捨てでいいよ」

「……美門？」
「違う」
「え、なんで……」

「名前で呼んでよ、A」

「……やっぱり気にしてんじゃん」
「そういう訳じゃない」


どうしたんだろう、今日はやけに主張が激しい。


「じゃあ……翼」
「ん、それがいい」


満足気な表情で頷く彼。


「今日はいきなりどうしたの」
「……上杉で遊びたくなってさ」

「……どうしてここで和典が出てくるの？」


私の率直な質問に、みか……翼は驚いたようにこちらを見た。


「お前……やっぱりアーヤと同じぐらい鈍感なんだな」
「それはない、彩ちゃんには負ける」


……今のはちょっと彩ちゃんに失礼かも。


「気づいてないの？上杉のこと」
「だから、和典が何？」
「…………」


呆れたようにため息をつく翼。


「まぁ、そのうちわかるよ」


(……俺がキューピッドになるかもね)


翼がそんなことを言った気がした。


「お、美門。早いな」


声をかけられて振り向くと、そこにいたのは男バスの部長である先輩だった。


「あ、おはようございまーす」
「おはようございます」

「ごめんA、俺先行くよ」
「ん、頑張ってね」


先輩と去っていく翼の後ろ姿を、私は不思議な気持ちで眺めていた。

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作者のひとりごと(随時更新)

春編書いて今は夏編に突入したところですが、私の高すぎる目標ではこの後も秋編、冬編と続きます。そして短編集を書く！みたいな野望ももっているのですが、いったい全部書き終わるのは何年後になるんでしょうか……。

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