紙飛行機

紙飛行機 10 ページ10

.





「……A？」






なっちゃんの呼び声を合図に

耳に拡がる周りのざわめき。





しゅるしゅると

全身から力が抜けていって。



その場にへたり込む。






冷静に彼の背中を見送った自分が

本当は怖いくらい冷静じゃなかったんだって


今、やっとわかって。







ぺたんと着けたお尻

冷たい。












いったい


何が起きたんだろう……







付き合ってやってもいいけどって


どういう……意味？





まさか

男女交際…！？





まさ、か……







"連れ立つ"の方の、付き合う……？




もしそうだったら

どこへ付き合ってもらうの？



おまじないの説明は？

した方がいい？




でも

帰っちゃった……







どうしよう


どうすればいいんだろう








今まで真面目に生きてきた。

勉強だってそれなりにしてきたの。



なのに

何ひとつ自分じゃわからない。











ぶつぶつと一人

混乱し続ける私を見かねてか



背後からなっちゃんが

覆いかぶさるようにしゃがみ


両肩に手を置いた。






大丈夫大丈夫って


何度も耳もとでつぶやきながら

こわばった肩ほぐしてくれる。






そして



見失った毛糸玉の端っこを

そっと


つまみ上げてくれたの。











「Aは横尾のこと、好きだったんだね」












全ての始まり。









遠い遠い人だった



あの人が毎日何をみて

何を感じて

何に笑うのか



何に怒って

何に泣いて

何に安らぐのか




そんなこと

少しだって知らないのに



知れないのに












「ん……」











ずっと…ずっと……






たまらなく

好きだったの












「好きって言えたんだ？」








私を覗き込む

優しい顔。









吸い込まれるように小さく頷けば


すごいじゃん！！！って

大ぶりに肩を揺らす。









「なっちゃん…笑わ、ないの？」


「は？なんで笑うの？」








なんの華も色もまとわない私の

こんな不相応な恋。


恥ずかしい恋。











「A、頑張ったね」











なっちゃんはこの恋を

私以上に


大切にしてくれた。












「……あり…がとう」











なぜだかまた

泣けてきた。









.










果てしなく続く

ひとつだけの青空



大好きなあの人の

真っ直ぐ伸びた後ろ姿









震える手で放たれた

小さな小さな


紙飛行機











飛んでった










.

紙飛行機 11→←紙飛行機 9

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す