紙飛行機

紙飛行機 6 ページ6

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それから一ヶ月。


横尾くんとなっちゃんは

遅刻しないで毎日学校に来た。



毎朝横尾くんがちゃんと学校にいるのは

やっぱりすごく嬉しくて。





でも

晴れとはちがってた。





人工的につくられた

太陽に似せた光みたいで


暖かく、なかったの。







おこがましい嫉妬は

辛くなんてまるでなかったけど



ただ、恥ずかしかった。








もうすぐ二学期も終わる。







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「あーい席つけぇ〜。今日は小テスト返すぞ〜」







教室入るなりそう告げるのは

定年間近の土井先生。


担当教科は日本史。






小テストなんて

いつやった…？






「悪いなぁ。夏休み明けにやったやつ、返し忘れとったわぁ」







小テストの無意味さを自ら露呈すると

目尻に刻まれる濃いめのシワ。


教室内に小さな笑いが湧いた。





男の子から出席番号順に名前が呼ばれ

教卓まで取りに行く。


なんら変わらない、通常運転。







「よこぉー。横尾渉〜」






呼ばれたその名に

そっと彼へ目をやれば


興味ゼロで机に突っ伏してる。






朝からずっと、おんなじ姿。




その姿を

朝からずっと



ううん

出逢ってからずっと




おんなじ気持ちで

見つめる私。








「おーい、横尾渉〜、起きろ〜」








先生の再三の呼びかけにも気づかず

規則正しく上下する両肩。


クラス全体の視線が集まる。





なっちゃんに目を向ければ

同じように寝てた。




二人ともここ一ヶ月の早起きが

だいぶ堪えてるみたい。







横尾くんの周りを取り囲む八席の住人。


私にとって一頭地に席を構える彼らは

互いに顔を見合わせる。





譲り合いじゃなくて

押し付け合い。







そうして

先生の五度目の呼びかけがかかったとき


後ろの席の古田くんが

遠慮がちに彼の肩に触れた。





「……横尾くん、呼ばれてるよ」






ゆっくり

顔をあげる。






「横尾！ほれっ、早く来てくんないと年寄りは肩痛い」





先生が教卓に座りながら

ピラピラと小さなわら半紙をなびかせた。





じっとその姿に見入ると

やっと事態を把握したらしく


無言で席を立ち小テスト受け取った。






振り向いた顔

まだ寝ぼけまなこ。






胸がきゅって縮こまって

息をすることもままならない。






映ることのない瞳。

感じることのない体温。


交わることのない人生。






それでも私

今日も横尾くんが好きです。

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