紙飛行機

紙飛行機 49 ページ49

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そばにあった手水場前。



作法の書かれた看板を

腕組みしながらじっと見てる。




険しい横顔。







これじゃダメだ…









「よ………横尾くん！！！！！」









勢いよく呼んだはいいけど



大きめに呼吸しないと

荒れ狂う鼓動の逃げ場がなくなって


酸素が不足してしまう。








やっぱりまだ

直視は慣れない









でも….








「なに？」


「…っ……たっ…」


「た？」









「ただいまっ！！！！！！！」









言えた…








すると険しかった顔が

みるみるうちに困った顔に。






「今さら？」


「…ちょっと、遅くなりましたけど、まだ、言えてなかった……ので…」








違う意味で

さらに心臓は鼓動を速めてく。









「おせぇよ」









低い声に急加速。

フルスピード。









「…ごめ、なさ


「バーカ」









そう言って

最後に小さく



笑った。









「おかえり」









涙って

どこから滲み出てくるんだろう



目の裏？

ほっぺた？


鼻の奥？






とりあえず息を止めてみた。






でないとね

また嬉しくて


泣いてしまいそうだったから






そんな些細なことで

バカじゃねぇの？って


きっと呆れられてしまうから









横尾くんが笑った…









「俺も、言えてなかった」



「………うん、…ただいま」



「おかえり」







横尾くんが

まっすぐに私をみる。





私が

まっすぐに横尾くんをみる。









時が、とまった。









「……ただいま」



「おかえり」








笑い合う。


私たちにしかわからないほど、静かに。








鳥肌が立った。









「ただ、いま………」


「おかえり…」





「ただ

「しつけーな」



「ごごごごごめんなさいっ…」








あーもう






無意識にまた前髪に触れてた。





すると相変わらずの冷たい手が

怒ったようにそれを阻むと


今度は力強く、引っ張った。






触れ合う。

私の前髪と彼の胸。






その瞬間

風にのって届いたの。






聞き逃してしまいそうなほど

小さくて



戸惑ってしまうほど

優しい





横尾くんの声。









「すげぇ待ってた」









じんわり緩む涙腺。

やっぱりすぐには直らない。







あのね

私もすごい会いたかったよ





今すぐに


飛んで行ってしまいたいほど








互いにおとずれる全部の明日を


一緒にいたい

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