紙飛行機

紙飛行機 5 ページ5

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「A〜！！！」





駅を降りて学校まで歩いてるとき。

飛んでくるパワフルな声。


振り返るより先に横付けされた自転車。






「おはよっ！！！」


「飯島さん！おはよう」


「もー！飯島さんはヤダって言ってんじゃん。もう二学期も中盤だよー？」


「あ、ごめん。えとー、なっちゃん」





それを聞いて彼女は

うんって、満足そうに顎あげる。



その顔がなんだか可愛らしくて

思わず笑ってしまう。






なっちゃんと関わったのは

入学式から席替えまでのほんの一ヶ月ほどで。



彼女は彼女と同じ色をまとう人たちと

私は美咲とのんちゃんと


それぞれ親しくなっていった。





でも私ね

恥ずかしくて言えてないけど



なっちゃんの天真爛漫な笑顔


出会ったときから

大好きなんだ。








「あー寒いね〜。朝ってこんな寒いんだねー」





肩すぼませ

ゆっくりした速度で自転車こぐ。





「なっちゃんがこんな早いの、珍しいよね？」


「そーなのー。実は宏光に賭けで負けてさー。罰ゲームで一ヶ月遅刻すんなって」






宏光……って







「隣のクラスの…北山くんって人？」





"あの集団"の一人だ





「そー。罰ゲーム断念したら罰金三万。女から金取るとかあり得なくない！？」





曖昧に笑う。






ごめんなっちゃん




あんまり

わかんないや……








「横尾もだよ」





「……えっ？」



「横尾も負けたの。だからお互い見張り番〜」





あいつ脱落しないかなー

なんて笑うなっちゃんの横顔。


うまく見れなくて。






「そっか」って小さく返した。


彼女には聞こえてないかもしれない。







なっちゃんが次に何か言いかけた

そのとき








「邪魔」








背後から発せられた低い声。






「あー横尾ー！！はよ〜。来てんじゃん！えらいえらい」






なっちゃんの「横尾」って響き。

いつもより耳にこびりつく。








「マジ寒みぃ」



「ねー。宏光多分まだ布団の中だよ？腹立って朝から電話してやったら出なかったもん！！！」


「俺もした」


「あははは！さすが横尾！だから次はさ、遅刻早退なしで罰金五万ってやつ、させよーよ」



「真冬ね」







入れるはずもない会話。


二人の吐く白い息。

見えない境界線。







また後でねって

横尾くんと並んで走り去るなっちゃん。





巻かれた黒いマフラーから

はみ出した茶色の髪が


私には

眩しくてたまらなかったの。


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