紙飛行機

紙飛行機 22 ページ22

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冷暖房完備。

向かい合わせの長ソファが二脚。

寝心地の悪いベッドが二台。



冷蔵庫があって

誰かが置いてく雑誌や漫画があって

先生の立ち入りもほとんどない。





いつからか、ここ保健室を

"オアシス"と呼び

何かと溜まり場に使っている。





特にニカと健永は

この矢沢美和にやたらとなついてて。





頭と素行以外悪いとこなんて無いくせに

何かとここへ集まる俺たちを


毎回やんわりと注意するだけで

受け入れてくれる。




もしこのオアシスと

解放された屋上が無かったら


もうすでに俺らは

干からびてのたれ死んでたかもしんない。









「でもなんで横尾くんはこんなことしたの？また二人が何かイタズラしたんでしょ〜？」



「ちっげーよ！俺らはただ挨拶に出向いただけなのっ！な、千賀？」






アイツの引きつった顔と

繋がれた手が頭をよぎる。






「俺はやめとこうって言ったのにさぁー、二階堂がどうしても見たいって言ったんじゃん」



「っはぁ〜！？おまっ、裏切るんの？」



「ん？挨拶？誰に？」








「「よこーさんの彼女〜」」












チッ…





太輔だ

ぜってー太輔だ







だって太輔以外の奴らは……











さっきから

かけ続けてる電話は一向に繋がらない。


まだ寝てるであろう太輔へ

膨大な量のイラつきを募らせる。









あー

マジ眠みぃ……









徐々に薄れゆく意識。



満開だった桜が

力強い葉桜へと変わった


あの青くさい初夏へ

俺をゆるりと連れて行く。







………








「……っ…くっ………っっ…」








古い民家のカビ臭いような匂いが

墨汁の匂いだと気づいたのは


ドア上部に付いている

"書道室"のプレートが目に入ったときだった。




そしてそこから漏れ聞こえてくる奇妙な声が

アイツの泣き声だって知ったんだ。






っだよ…






些細な恐怖を与えられ

それはすぐに苛立ちへと変わる。





同じ並びにある古典の資料室で

入学早々言い寄ってきた女を

いつも通り泣かした後


そいつを置き去りにして

足早に帰ろうとしたときで。






どいつもこいつもすぐ泣きやがって

バカじゃねぇの？


泣けばなんとかなるとか

思ってんだろ







昔から女の涙がすげぇ嫌いだった。







すぐに視界から外し

また歩き出そうとしたとき






ガンッッッ！！！！






いきなり立ち上がり

目の前の半紙をびりびりに破く


薄気味悪い書道室の女。

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