紙飛行機

紙飛行機 13 ページ13

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掴まれていた右腕は離されて


微かに首をひねれば

覗き込むように近づけられた顔


もう、目の前。







「だいじょぶかい？」







この人


北山くん…って人だ……








慌てて顔背け

彼の問いかけにこくこく頷いた。








「よこーさん急にどしちゃったの」


「どうしたもこうしたも、コイツが無視すっから」


「コイツがって、横尾さん…この子誰だか知ってんの？」







頭上で交わされる二人の会話。

明らかに北山くんは私の存在を知らなくて。



隣のクラスってこともあるけど

地味な私にはよくあること。









「A、……行こ？」







遠慮がちに美咲が手招く。








「う、ん……」








ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい





心の中で繰り返し謝りながら

その場を後にした。








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「怖かったぁ…私、心臓ばくばくしちゃった」


「A、あの人たちに何かされてるの？」





強張った頬に手をあてるのんちゃんと

剣のある言い方の美咲。









ちがうの




何かしてしまったのは私の方で


好きになってしまったのも

私なの





彼は何も悪くない









「ううん。ちがうの。私が悪いの」


「Aちゃん、なんかしちゃったの？」








のんちゃん、泣きそう。








今まで言えなくてごめんね




彼を好きな私を

受け入れてもらえるか


不安だったんだ






でも……








「あのね……私ね、ほんとはずっと前から…」









美咲の放つ鋭い視線。

のんちゃんの不安げな瞳。



目の当たりにしたら

いっきに緊張は増して。




汗ばんだ手のひら

ぎゅっと握りしめた。






そんなとき

不意に浮かんだのは



なっちゃんの、あの笑顔。









私もちゃんと

この恋を大切にしたい。









「好き、だったの。横尾くんのこと……今も、好きなの」









騒がしい教室の隅で

一世一代の告白。




二人の反応を待つ数秒が

長く長く、感じられた。







美咲が何かを言いかけたとき

教室に先生が入ってきて。




着席を促す呼び掛けに

三人、無言で席につく。








やっぱり


ダメ、かな……













それから二人に

何度か詳細を話そうとしたけど


なんとなく話し、遮られて。






聞きたくないのかもしれないと思うと

その日はそれ以上何も言えないまま




放課後になった。





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