恋の花（2）

＊花 58＊ ページ10

休み時間になっても
今日はまったく顔を出さないミツ。



昨日はあんだけ大騒ぎしてたくせに。





太輔と気まずいのか？


あからさまに不機嫌だったよな。

珍しく。






原因は

…佐藤さん？









「渉ー！」




俺の席すぐのドアから
りさがひょこっと顔覗かせる。





「またジャージの上貸して〜？」




「いいけど、友だちに借りれば？
俺のじゃデカくね？」




「いーの！！渉のが好きなの！」





口尖らしてむくれる。

いつも何かあるとこの顔。




のろのろとロッカーに取りに行き手渡す。



すると
うれしそうに一度顔を埋め

すぐに勢いよく口を開く。






「ねぇねぇ、今日、太輔とAちゃん一緒に遅刻してきたでしょ？」




「あぁ、うん。なんで知ってんの？」




「だって朝、私たちの後ろにいたんだもん！」






え？
なんで言わねぇの？




思わず顔あげた。





そんな俺の気持ちを読み取ったのか

またむくれ顔になり



「久々渉との二人乗り登校だったから、邪魔されたくなくて言わなかったの！

向こうも全然追いついてこなかったし、すっごいゆっくり走ってたんだよ。」




「ふぅん。」








つーか

太輔たちも俺らに気づいてて
声かけなかったってことだよな？


りさといるから気遣ったのか？







ふと太輔の方に目をやると

佐藤さんの頬っぺた潰して遊んでる。








太輔と宏光とAちゃん、もしかして三角関係！？！？

どうなるんだろ〜

私たちは静かに見守ろうね！



なんてはしゃいでるりさ。







なんだかわかんねぇけど

無性にイライラした。


















「あんま人のそうゆうの面白がんなよ。」






それは思った以上に

低く響く。






やばい。




そう思ったときにはもう手遅れで

二人の空気がいっきに静まる。






これは
むくれを通り越して多分涙目だな。





チラッとりさの顔みると
案の定


うっすらかかる涙の膜。

固く閉じた唇が微かに震えてる。









「はぁー…

わりぃ。言い過ぎた。」












「渉…何イライラしてんの？

意味わかんない。」









確かに。

意味わかんねぇ。






出ていくりさの後ろ姿も見ずに


目を閉じて

大きく深呼吸した。






なんで俺
こんなにイラついてんだ？
















授業中携帯が震える。

先生の目を盗み
机の下でそっと開く。



『お昼休み工芸室来て？話したいことあるから。』

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