恋の花（2）

＊花 97＊ ページ49

「まさか！渉が残ってくれるなんて！
しかも先生説得して！も〜信じらんなぁい！」


布団から覗く嬉しそうな顔。





慣れない環境のせいか

昨晩の寒さのせいか


他にも何人か体調崩した人がいるみたいで

比較的元気なりさは
自分の部屋で寝ることになった。


先生は、何かあったら呼ぶように告げて
部屋を後にする。



変なことするんじゃないわよ。

なんて真面目なトーンで言い残して。笑










布団のわき、あぐらかいて座る。




「ほら、ちゃんと寝てろよ。」



「ん？だって〜！嬉しくて眠れなーい！」






見かけは落ち着いてて大人っぽいくせに

まるで子どもみたいにはしゃぐ。





怒るときも

泣くときも

いつも全力。



だから喜ぶときも

まっすぐぶつけてくる。





俺にないもの。





あぁそうだ…

中二の俺は

りさのこうゆうとこに惹かれたんだ。









薬が効いてきたのか
隣からクークーと寝息が聞こえてきた。


椅子に移動し軽く目をつぶる。







昨日、あれからずっと佐藤さんに謝りたかった。


でも戻ってきた二人はなんか雰囲気変わってて

邪魔できねぇなって。






ただもう少し一緒にいたくて引き止めた。


りさに言わなかったのは

そんな俺の後ろめたさからだって

もう自分でも分かってんだ。






人間後ろめたいことがあると優しくなるって

ほんとなんだな。



そんで喜ぶ顔みると

またさらに罪悪感が増す。








太輔が佐藤さんを好きなこと。

いつからって言われたらわかんないけど

どっかで薄々気づいてた。



ミツも気づいてたんじゃね？





あの二人は
きっと想い合ってるから


ミツには申し訳ないけど

入り込む余地は初めからなかったよ。





あの陽だまりは

もうすぐ太輔の場所になる。












「…ん、渉？寝てる？」




振り返ると上半身起こしてこっちを伺うりさ。




「あぁ、起きた？具合どう？」



「んー？なんかさらに元気になった！」



「ならよかった。なんか飲む？」





首を横に振ると、照れた表情で手招き。









りさのこと大事だって思う。




でもなぜか俺は

もういちどあの陽だまりを探したがってる。








『今日はありがと。
りさのカレシがわったーでよかったよ。』




四人で遊んだあの日。


裕太から送られてきたメールの文面が

頑固なコゲみたいに


頭にこびりついて離れないんだ。












そっと彼女に近づいた。

少しだけ作った笑顔で。

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