恋の花（2）

＊花 90＊ ページ42

「りーさ！！
もういいじゃん！横尾さんもこうやって言ってんだし！

たまたま会って話し込んじゃうことくらい、りさだってあんでしょ？んね？」




北山くんがわざと明るく

背後から
りさちゃんの肩を軽くつかんで揺すった。












ゆっくりと彼女が顔あげる。


私をまっすぐ見据えた。













「…Aちゃんってさ、渉のこと、好きな


「りさ！！！！！」









すぐそばのベンチから
放たれたその声。



太輔がスッと腰を上げ

私とりさちゃんの間に立った。







「りさ？
お前が腹を立てるなら、その相手は渉だろ？
Aに色々言うのは違う。」






すっかり下を向いてしまった
卑怯な私の頭上で

冷静に続ける。








「渉も、りさが心配性ってもうわかってんだろ？
だったらお前がちゃんとしろよ。



Aのこと…もう巻き込むなよ。」













それは

怒りより



願いに近いような




そんな声。
















いつもと明らかに様子の違う太輔に

その場がさらに静まる。









「…わりぃ。


佐藤さん、ほんっとごめん。」









謝る横尾くんに

首を左右に振るので精一杯。









みんなの前で


横尾くんをかばうことも

太輔にお礼を言うことも

りさちゃんの質問に答えることも



なんにも出来なかった。









だって


私が横尾くんを好きなこと

あのとき
りさちゃんを気づかう余裕なんかなかったこと


もっともっと一緒にいたいって思ってたこと





全部

事実だから。









邪魔者。

卑怯者。

偽善者。





頭の中

次々に私を責め立てるもう一人の自分。












「行こう。」




勢いよく太輔に手を取られ
輪から外れる。








振り向きもせず
どんどん通りを進む太輔の背中は

見たことない


なんだか大きな背中。

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