恋の花（2）

＊花 88＊ ページ40

「宏光〜！
うちら何時までここにいるんだっけ〜？」




「俺が知るわけないっしょ。班長は？」




「ん〜、どこだろ？違うお店かな？」





そう言いながら
こちらに向かってくるりさちゃん。


彼女の手は
横尾くんの腕にしっかりと絡まれてる。










昨日そらされた目が

今日はまっすぐ私を見る。







「偶然会えたね！
最初、宏光がAちゃん見つけたんだよ！

また変なことされてない？大丈夫？」





「あっ、う…


「あっ！！！山村せんせぇー！！」





答えようとした声は
彼女の通る声にかき消された。






「お〜。ちゃんと予定通り進んでるか〜？
北山、お前は悪さしてないだろうな〜？」






「先生ひっでぇな。

大仏みて感動して、鹿に大量の餌あげて、今は漬け物吟味中。

めちゃめちゃ模範的な生徒だわ！！」






声をあげて笑う山村先生。






「先生一人で何してるの？寂しいね。

奥さんと来たかったぁ？」




女子高生からのからかいに
少し照れながら

りさちゃんと横尾くんを交互にみる。





「お前らはまぁた一緒にいんのか？
今日は昨日みたいに夜遅くまでロビーで話たりするなよ〜。」





いつもののんびりとした口調で

そう言い残すと

また土産通りを進んで行った。











一瞬にしてりさちゃんの顔が曇る。






背中にひんやりとしたものが

スーッと通った。











横尾くん

私といたこと言ってないんだ。







…そうだよね。

彼女が心配するもん言わないよね。









どうしよう。









「…渉、昨日ロビーにいたの？

ずっと部屋にいたって言ってたじゃん。
誰といたの？」




すでに責め立てるような早口。









「りさ、今は。あとで話そ？」




眉間にシワ寄せて、下げられた口角。




でもその低い声から

思いやりを感じるのは私だけかな。












目が泳ぐ。






指先が小刻みに震えるのを

隠すように

そわそわと十本の指を絡ませた。









「もしかして…Aちゃん？」

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