恋の花（2）

＊花 84＊ ページ36

今日は一日班別行動。

奈良から京都へ
観光しながら電車で移動。



とはいっても
だいたいみんなお決まりの名所を組み込んでる。


行く場所行く場所
同じ制服の子が何人もいた。











太輔が泣かせてくれたおかげで


少しまぶたは重いけど

気持ちはだいぶ軽い。








朝ごはんのとき宴会場で会ったら

ひっでぇ顔だなって小さく笑った。








私は

何度この人に救われるんだろう。








なんでこんなに


優しいんだろう。

















旅行中ってなぜか

いつもなら見向きもしないような雑貨の前で

ついつい立ち止まりたくなる。





耳かき、貯金箱、記念ちょうちん、天狗のお面まで。


一体いつから置いてあるの？
ってくらいホコリかぶってるのもあったり。



懐かしいネーム缶バッチやスプーンは
買いもしないのに自分の名前探しちゃう。




そんな"ザ・土産物！"を見ながら
えりときゃっきゃっ笑う。









昨日部屋に戻った私に
えりは何も聞かず


ただそっと
冷たいタオルくれた。




とりあえず少しマシになるようにって。

話したくなったら話してって。







熱を帯びたまぶたに


ひんやりとした冷たさと

えりの優しさが


これでもかってほど沁みて



タオル当てながら
また少し泣きそうになった。
















「A、えり、あっちの並びにうまそうなソフト売ってる。」




太輔が指差す方みると

他の三人はもう頬張ってた。




おいしいのか
おいしくないのか

真顔で抹茶ソフトと向き合う横尾くん。









昨日はあんなに近くで

たくさん笑い合ったのに




また時間が戻ったみたく


遠く感じる。





ここ最近の出来事が
全部幻だったのかもしれない。












「えぇー、寒そぉ！」


なんて

せっかく声かけてくれた太輔に
可愛くない口叩きながら

店に近づく。







ソフトクリーム片手に振り向く彼を




直視できないのは

日差しのせいだけじゃない。












ねぇ横尾くん


また

"佐藤さん、これ、食べたいの？"って

笑ってよ。




もし食べたいって言ったら…

どんな顔するの？

















なんて嘘。





もう

そんなこと言わないで。

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