恋の花（2）

＊花 76＊ ページ28

いつもより口数の多い横尾くん。

自然と私の口数も増えてく。







初めて聞く小学校や中学校の頃の話しは



知らなかった時間を

ほんの少し共有できた気がして



幼い私が

幼い横尾くんに恋をしてる姿が

目に浮かんだ。





だって


出逢えばきっと

私は彼を好きになる。












「え？横尾くんお料理好きなの！？」



「うん。たまに作る。」





そうなんだぁ…



キッチンに立つ横尾くん想像したら

なんだかにやけちゃって


こぶしで口もと隠した。






「でも…同じ作り方してんのに、母親の手料理にはなぜか勝てないんだよなぁ。」





悔しそうなしかめっ面。


少し幼い横顔。







「ん〜…それは横尾くんへの愛情の違い？かな？

お母さんが横尾くんにかける愛情と、横尾くんが自分自身にかける愛情の違い。」





すると彼は

そりゃ敵わないわって


優しい声でつぶやいた。








「なんかちょっと違うかもしれないんだけどね…

おにぎりって、もうお母さんそのものって感じしない？

その家庭その家庭で、なんか違うの。

自分のお母さんが作ったおにぎりが一番安心するような、私のはコレだ！みたいな。」





「すげぇわかる！
母親以外が作ったおにぎりってなんかヤダ。笑

あっ、別にきったねぇとか思ってるわけじゃないんだけど…なんつーか…」





眉間にシワ寄せて

言葉選びに必死になってる姿が
かわいくてかわいくて




「きったねぇって…ひどい！
よそ様のお母様の手のひらを！！」



なんてからかうと

さらに必死になって言い訳してる。





その姿みて
またクスクス笑ったら


つられて横尾くんもクスクス笑った。











「あー！なんっか、なんだろ。わかんねぇ。

やっぱり佐藤さん、マネージャー似合う。」





突然声のボリュームが上がる。







「急にどしたの？

あっ、また適当に言ってるんでしょ？
初めて話したとき…そうやって言われたよ？」




「…いや、適当じゃないんだけど、理由は言葉じゃ説明できない！」




「なにそれ！」








目が合うと

今度は同時に



二人で笑った。






なんか…頭おかしくなりそう。









もう少しだけ一緒にいたい


お願いだからまだ時計見ないでって


すでに

彼女を気づかう余裕すらなくなってる。











途切れた会話の後。




飲み干した烏龍茶の缶テーブルに置き


次に話し始めた彼の声は

トーンが少し落ちてた。

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