恋の花（2）

＊花 74＊ ページ26

Tシャツに
グレーのパーカーを羽織り

下は紺のハーフパンツ。




見慣れないラフなその格好と

洗いざらいの

まだほんの少し湿り気のある髪。


無防備な笑顔。







その全てが

私の心を瞬時にもってく。











ガコンと販売機が飲みもの落とす。







「隣、いい？」





手には烏龍茶。



ギュって握ってるから
きっと冷たいやつなんだな。


なんて
どうでもいいことを考えながら頷いた。





なんだか現実味がなさすぎて

どこか冷静で


頭がついていってない。








「ロビーも少し暖房効いてんだね。
部屋が暑すぎてさ。男八人の部屋だからか？」




そう言うと烏龍茶に口つける。

一定のリズムで上下する喉。




吸い込まれる。








視線に気づきこっち向く。




「ふふ。
佐藤さん、また飲みたいの？これ。笑」




烏龍茶の缶持ち上げた。








あー
またやっちゃった。






焦って

昼間と全く同じ反応。







「そんな振ったら首取れちゃうよ？笑」




「うん、えっと…大丈夫そう！」



首に手を当て
真剣に答えると


大きく大きく肩揺らして笑い

目を細めた。






もうマジ佐藤さんってなに？

って横尾くんが聞くから


また真剣に考えて

答えに詰まって



さらに笑い声は大きくなった。







何が何だかよくわかんないけど

横尾くんが笑ってるから


もうなんでもいいやって。




私も笑った。








こんななんでもない会話でも

どうした？

ってくらい楽しくて




一秒が一分になればいいのに。





ううん、それじゃ足りない。




私たち以外

時間が止まっちゃえばいいのに。




小学校のとき
そんな内容の劇やったな。










ふとロビーの隣にある

暗いお土産屋さんに時計見つける。








あ…もう時間だ。




言いたくないな。

でも先生来ちゃう？


あとちょっとだけ…ダメかな。









脳裏にりさちゃんの顔が浮かんだ。







…何考えてんだろ。

こんなの彼女に悪い。








「横尾くんもう時間。部屋戻らなきゃ。」




売店の時計を指差す。




「あぁほんとだ。」








残念な気持ちぎゅうぎゅうに押し込めて

勢いよくソファから立ち上がる。












突然

左の手首に感じたのは

横尾くんの体温。






「あとちょっとだけ話さない？」

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