恋の花（2）

＊花 71＊ ページ23

賑やかなはずの通りが

まるでトンネルに入ったみたく
音がなくなる。




北山くんを筆頭に

私を含めたそこにいる誰もが驚いた。

でも
きっと一番驚いてたのは横尾くん。





すぐに手は離したけど

北山くんから目が離せないでいる。






ひょっとしたら耳が拍動してる？

そう思うくらいに

自身の鼓動だけが鳴り響く。





なんで？


彼女の前でこんなことしたら…






突然の出来事に

思考回路はここで停止。





りさちゃんの顔見れない。






優しいね。

ほんとに。









多分何秒か。


でも何時間にも感じるような

そんなトンネルの出口見つけたのは北山くん。







「あー…ごめん。
ちょっと調子乗りすぎました。」




私に向かって頭下げる。





言葉がすぐに見つからなくて

手のひら向けて左右に振った。









「…よこーさん、恐ぇよ。」



しょぼくれたように
口を尖らせてつぶやく北山くんは

お母さんに叱られた子どもみたい。





ふわっと場が和む。



やっぱり憎めない人。









ありがとうを口にすると

まるで
北山くんがすごく悪者になっちゃう気がして


言えなかった。






だって彼は悪くない。





横尾くんを好きだから
見られたくなくて


りさちゃんの前だから
なんだか惨めで


逃げ出す途中だったから
戻るのが嫌で




全部私の勝手で

冗談を流せなかっただけなの。









「ん、もしもし？

うん、うん、うんとね…どこだろここ。

いや、まだちょっと…うん。ごめんね。」




マナーモードにしてたらしい携帯で
突然話し始めるりさちゃん。









「おーい！！何してんの！？行くよ〜？？」




先で待つ男の子たちが
しびれ切らして声かけてきた。









「りさ、班に戻れ。
他の人に迷惑かけんな。ミツも！」




横尾くんが諭すように二人に告げる。





無表情で彼を見つめてから

うつむき黙ったまま
足早に歩き出すりさちゃん。




その後ろ姿は

硬い。









「あれ、多分泣いてる。
ミツわりぃ、あいつ頼むわ。」




そう言って
苦笑いする横尾くんからは

りさちゃんへの優しさが溢れてる。





二人のみえない絆。

痛いほどに伝わる。


すごい遠い。






こんなに目のあたりにしたの

初めてかも。








なんだか胸がいっぱいで

嫉妬なんて感情
おこがましい気すらしてきて






なんでこの人を
好きになってしまったんだろう。






ただ

それだけを強く思った。

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