恋の花（2）

＊花 61＊ ページ13

「佐藤さん、部活？」




「うん。りさちゃん！待ってたよ。」








欲しかったはずの眼差しが

今は辛くてたまらない。



直視できない。





勝手でごめんね。








「あー早く行かねぇとまた怒られるわ。
じゃあ頑張って。」










すれ違うとき

もう下は向かないけど






心臓は

あのときより
何十倍もの威力で




握りつぶされる。












「あっ！佐藤さん！」






呼び止める
変わらない甘い声。

誘われるようにふわりと振り向く。









「今日の朝も、枕、燃えたの？」






彼の細めた目が

今度こそ私をとらえた。







「ちっ違うよ！！
寝坊しちゃったの！！」





クシャクシャって

口大きく開けて
白い歯みせて笑うと


彼は彼女のもとへ走ってく。










じんわりぼやける視界。

鼻の奥がツンとした。







大好きな声で
呼び止めたりしないでよ。


そんな笑顔全然見たくない。


私の話なんか覚えてなくていい。











これ以上

好きになりたくないの。












神様も呆れちゃうかな？

究極のワガママ。













まだ名前すら知られてない頃


廊下ですれ違えただけで

ただそれだけで


一日が幸せな色に変わった。





横尾くんがいつか

佐藤さんって呼んでくれたらなぁなんて思ってた。





今はただ

もう傷つくのが恐くて
逃げ出したい。




でもね

傷ついた分だけ

その分だけ

この恋が終わりに向かってるんだって

それはささやかな希望。





いつのまに

こんな哀しい色になっちゃったの？








修学旅行。

きっとまた一歩
終わりに近づくはず。


近づけるはず。






目背けたりしないで

逃げたりしないで



全部

受け止めよう。




きっと唯一の近道だから。

















あの雨の日

ひょっこり息吹いた
小さな小さな恋の芽は



伸びて

伸びて


大輪の花を咲かせた



大好きなあなたを想い
心地よい風に花びらが揺れた



ただそれが幸せだったのに






いつのまにか
ぱんぱんに膨れあがったわたしの想いは



重力に逆らえず

徐々に頭を落とす




弧を描いてしなる茎の

限界は近い

＊花 62＊→←＊花 60＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す