あの日 ページ12
物心つく頃に親というものはなく、双子の弟にあたるアサギだけが俺の家族で、親友で、何よりも大切な存在だった。
宙賊から分捕った宇宙船で旅をしていた俺たちは、警報と船体が引き裂かれる音で目を覚ました。
宇宙船がバラバラになる前になんとか脱出ポッドに乗り込んで、落ちた先は地図にも載ってないような辺境の惑星だった。
「どうする?クレナイ」
「当面はここで生活するしかないな」
平和に暮らせるなら永住したって良かったが、もちろんそう上手くは行かず、蛮族やら宙賊やらとドンパチやる日々。
襲撃疫病ヒト狩り動物、太古の脅威にサイコシップ汚染船、暴走群ゲリラ雷雨太陽フレアに熱波寒波パチパチ深々度……
「降下襲撃だ!タレット区画に下がって各個撃破しろ!」
「ヒールルートが枯れてるッ」
「ヒト狩りワーグだと!?ペットを扉前に集めろ!」
「遺跡を開けるぞ。カクテルは持ったか!」
「寝てる暇があったら消火しろ馬鹿野郎ッ!!!」
「アルパカ毛ニット帽あったけぇ……」
「虫が湧いたぞー!寝静まったら火を放て!」
あらゆる苦難が俺たちを襲ったが、どれも二人の力を合わせて乗りきってみせた。
……だから油断してた、なんて訳はなく。
あの日だってきちんと装備一式を着込んで、睡眠も食事もばっちり、心情だって安定してた。
備えは万全だったんだ。
けれど、たったひとつのロケットで、すべてが終わった。
ピュン!と閃光が走って、それらを知覚したときにはもう、遅かったのだ。
「あ、」
呆気なく、弟は死んだ。
即死……だったのだろう。
ほんの一瞬、瞬きほどの時間の出来事だった。
自分の血を分けた、たった一人の肉親を亡くした。彼は永遠の彼方へ行った。
そして独りになった。
一緒にこの星を出ると約束したのに、この世は日に日に闇に包まれていく。
ばらばらになった遺体を泣きながらかき集めて、冷凍睡眠カプセルに押し込んだ。
宇宙船が起動できたって、俺一人じゃ意味なんてないだろ。
絶対に、二人でこの星から脱出するって約束したじゃないか!
俺の片割れ。
俺の相棒。
……こんなクソッタレな世の中だからこそ、約束は果たされなきゃいけないだろ?
なあ。
だから、待ってろ。
もうひとつ約束をしよう。
「__必ず、お前を生き返らせる」
それだけを胸に、俺は半身を亡くした今を生きている。
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生姜(プロフ) - まうるもちさん» 感想ありがとうございます!頑張って書いた甲斐がありました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: fe71aaf4f1 (このIDを非表示/違反報告)
まうるもち - 読みやすくて面白かったです!ありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:生姜 | 作成日時:2020年1月12日 22時