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青年はクレナイと名乗り、先ほど壊れた椅子をポイっと廊下に放ると新しいものを持ってきた。
かくして個室としては平均的な病室にて大の男三人が膝を付き合わせることとなり、コネシマは大先生が差し出した紫の生ベリーを貪りながら青年の話を聞いた。
彼の話はこうだ。
ここは宇宙船技術どころか、星間通信機すらないド田舎惑星。
帰りたいのなら、自力で宇宙船を用意するしかない。
クレナイは研究によってその技術を会得していて、船の制御に必要不可欠なコアパーツまで入手している。
このコロニーの防衛と通常業務、そして自身の目的さえ果たされれば、宇宙船は二人に譲っても構わないとまで青年は言った。
「せっかく造れるようになった宇宙船を渡してまで手に入れたいものって何なんや？」
「せや、協力したるから教えてや」
コネシマの問いに、大先生も便乗した。
クレナイはグッと奥歯を噛み締めて、絞り出すように告げた。
「……リザレクトシーラム」
地の底から響くかのように低い声だった。
「俺には双子の弟がいてな……そいつを、蘇生したい」
それは、宙賊やら闇商やらが当然のように闊歩し、限られた資源目当てに殺し合うのが当たり前なこの世の中では至極真っ当にして、ある種地獄のような目的だった。
実物こそ目にしたことはないが、蘇生薬の話ならコネシマも耳にしたことがあった。
大先生はより詳しいようで、険しい表情でクレナイを見やる。
「……蘇生薬と言ったって、完璧じゃない。後遺症が残ったら狂って死ぬ」
「知ってるさ、それくらい」
「大事な人を、二度も死なせることになるかも知れんのやぞ？」
「それでも。俺は、あいつに会いたい。……たった一人の、家族なんだ……」
ぽとり、滴が落ちた。
コネシマには、死しても尚会いたいと願うような家族は存在しない。
元よりそんな情緒もない。
だが仲間意識ならあるし、人として最低限の良識も幸い持ち合わせがあった。
「そうか……お前、家族に会いたいんか……」
「シッマ……！」
泣かせるやないか……！と目元を擦っていた大先生が、コネシマの発言にとうとう顔を覆った。
「分かった。そういうことなら協力したるわ！俺がお前ら兄弟を救済しようじゃないか！」
ベリーによって腹が膨れ、麻酔によって睡眠もばっちりのご機嫌シマは、寛大な心で請け負った。
そして二人はコロニーの一員として加わり、脱出と引き換えに青年に協力することになる。
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生姜(プロフ) - まうるもちさん» 感想ありがとうございます！頑張って書いた甲斐がありました！ (2020年2月26日 22時) (
レス) id: fe71aaf4f1 (このIDを非表示/違反報告)
まうるもち - 読みやすくて面白かったです！ありがとうございました！ (2020年2月26日 22時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生姜 | 作成日時：2020年1月12日 22時
