第4話 ページ4
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新幹線の車内は、ホームにいた大量の学生が一斉に流れ込んだせいでひどく混雑していた。
とりあえずここから一番近い号車を探してみるが、空いている席は見当たらない。
…自由席を取ったのは間違いだった。ひょっとすると、目的地まで立ちっぱなしかもしれない。
ボーっと立っていても席が空くわけでもない。せめて広いスペースに移動して壁に寄りかかりながら到着を待とう。
ため息を押し殺して、鞄の紐をかけ直した時だった。
「もしかして、あなたAAさん？」
突然名前を呼ばれて、肩が跳ねた。慌てて振り返ると、そこには白髪の綺麗な女性がいた。初めて会う人だ。誰だろう。
「はい、そうですが…。あなたは？」
「そうよね！いきなり声をかけてごめんなさい。私は轟冬美。轟焦凍の姉です」
「ああ、お姉さまだったんですね」
轟という苗字を聞いた瞬間にピンときた。これで彼女が誰なのかははっきりしたが、彼女がなぜ私に話しかけてきたのかが分からない。
「ひょっとしてAさん、席を探してるんじゃない？」
「そうなんです。こんなに混んでるとは思わなくて」
「ねえ、良かったら私達の席に来ない？ちょうど一席空いてるの」
「いいんですか！？…じゃあ、お言葉に甘えて」
「そうこなくっちゃ。着いてきて！」
ねえAちゃんって読んでもいい？私のことは冬美さんで構わないから！と元気に話しかけてくれる声に思わず笑みがこぼれた。
この後、自分がいかに人の話をよく聞いていないかはっきりするのだが、この時の私は知る由もなかった。
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作者名：Larisa | 作成日時：2022年7月29日 21時
