episode23.1 ページ29
「石田!
ごめん、遅くなった!」
息を切らしながら走ってくるのは、
小学生からの腐れ縁、智哉だ。
俺がこうして智哉と会うのは、
あいつと智哉が別れた直後以来だ。
「おう。
忙しいのに悪いな。」
「全然!
じゃあ、本題に入ろうか!」
こいつは昔から穏やかで、
人懐こくて、俺とは正反対だ。
あいつが智哉を選んだのも、
よく分かるって、
そう思って納得しようとしていた。
でも、あの時から俺は、
あいつを智哉に渡したのが、間違いだったんじゃないかと、
そう思うんだ。
「この前、ここで、
なんであいつと会ってた?」
「…たまたま、かな。」
嘘だ。
「あっそ。
…で本当は?」
「…はぁー…
コンビニで見かけて、思わず追いかけた。」
何度か視線をさまよわせて、困ったように言う智哉は、
やっぱりまだあいつを好きなんだ。
「さくらから、色々聞いたんや。
…俺が心配することはなんもなかったんやな。」
自嘲気味に話す智哉に、
怒りが湧いた。
「あほかお前は。
あいつがあそこまで持ち直すために、それだけ泣いたか知らんやろ。
俺は、それをずっとそばで見てきたんや。」
― さくらのこと、頼むわ。 石田なら安心して任せられる。 ―
あの日、智哉にそう言われたから見てきたわけやない。
俺はやっぱりあいつが好きで、
ほっとけなかったんや。
今でもあいつが好きで、
今の関係を心地いいって
安心しきった笑顔でへにゃって笑って、
俺の前で油断しまくって、
それを何度壊してやりたいと思ったか。
でもできなかった。
それが答えなんや。
「あいつ、結婚するかもしれんで」
「え!? い、石田と??」
「ああ!? 会社の社長のご子息やってさ。」
あいつは結婚する気はないやろうけど、
これくらいの意地悪は許してもらおう。
放心している智哉を残して、
俺はさくらの家に帰った。
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ゴリラ(プロフ) - ご指摘、ありがとうございます。外しました。申し訳ありませんでした。 (2018年8月14日 20時) (レス) id: 92baebc47b (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグちゃんと外しましょう。違反行為です (2018年8月12日 16時) (レス) id: 484c9d624e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゴリラ | 作成日時:2017年7月11日 1時