彼女の本棚_kwkm ページ3
川上side
『あの…川上さん、ですよね?』
そう声を掛けられたときは、QuizKnockのファンだろう、そう思った。
「はい」
俺は軽く笑顔で声の方に振り向く。
しかし、声の主の顔を見た途端、俺は一瞬虚を突かれた。
「もしかして……書店の…」
『はい、A Aです』
こんなところで、書店に近くもない駅前で彼女に声を掛けられるなんて全く思っていなかった。
___
ああ、今日も来てしまったな。
俺は苦笑しながらいつもの書店に足を踏み入れる。
俺は確かに本が好きだ。
それは否定するところなど1つもないのだけれど。
ここに来てしまう理由には、それ以上のものがあった。
ここで働いているAさんだ。
彼女の本への思い、そして本との接し方。
変な言い方かもしれないが、それらに俺は惹き付けられてしまった。
『あ、また来てくださったのですね、ありがとうございます』
そう言って、俺に向けられる笑みも俺を惹き付けるには十分なものだった。
それが俺だけに向けられているものではないと知っていたけれど。
そんな彼女とはただの店員と客の関係だったが、年も近いことから、オススメの本を互いに紹介したり、書店内で少し話す仲ではあったのだ。
___
「あ、俺、この後どっか入って本でも読もうかと思ってたんですけど…」
彼女を引き留めたくて、この後どこ行かれるんですか、と続けようとすると、彼女は分かりやすく表情を変えた。
『私も同じですよ。折角ですし、オススメの本の話聞かせてください』
目を輝かせて話す彼女に、俺は二つ返事で了承した。
___
「この本、最近読んでるんですけど」
『あ、それ、私も読んでます』
話し始めて早速、共に取り出した本は同じもので笑ってしまう。
『どうやら気が合うようですね』
「みたいですね」
2人で笑いながら、本の話をする。
ネタバレにならない程度に。
『あ、そろそろバイトあるので帰りますね』
時計を見て、彼女が立ち上がった。
「あ…その、LINE交換しません?」
『あ、良いですよ。川上さんの話、もっと聞きたいです』
グッ、と胸が締め付けられた。
いつもよりも明るい笑顔が今は俺だけに、間違いなく俺だけに向けられたのだから。
___
その日の夜、俺がスマホ片手に葛藤していた、ということは言うまでもない。
恋心を自覚してしまったんだ。
仕方ないさ。
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R - 初めまして!読まさせて頂きました。リクエストをしても良いですか?もし良いのであれば夢主が失恋して砂川さんに相談したら付き合うみたいな感じです(?)よろしくお願いいたします! (2021年10月9日 7時) (レス) id: 25d77a33b7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]おおよそ一年ぶりの更新です。長く間が空いてしまいましたが、少しずつ更新していくかもしれません。 (2020年7月19日 15時) (レス) id: 6a4f573938 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - [作者の独り言]ただ好きと隙はイントネーション同じだけど鋤は違うのが難点ですね。 (2019年7月2日 22時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - 更新まで間が開き、大変申し訳ございません! (2019年6月29日 8時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
蒼衣瑠璃(プロフ) - 月乃さん» リクエストありがとうございます!大人っぽいこうちゃんのお話ですね。書かせていただきます! (2019年4月17日 7時) (レス) id: 9b47b20b96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼衣瑠璃 | 作成日時:2019年2月11日 8時