378 ページ28
「…な、んで…？」
瞬間的に、
脳裏を巡るいろんなもの。
朱里さんの吐き出す煙草の煙。
歪んでいく景色。
叩かれた衝撃。
繋がれた手首の痣の色。
切れたネックレスと壊れたピアス。
朱里さんの笑い声。
目の前の人の、言葉。
肌を這う、あの感触…。
徹「Aさん…。A、さんっ！」
私に気を取られていたたかの身体を突き飛ばして、
私に近づく徹くん。
「…や。い…や、こない、で…っ。」
ガクガクと震えだす体を支えられず
崩れ落ちる私。
西「Aっ！…っうっ…っ！」
徹くんに突き飛ばされながら、
私の方へ駆け寄ろうとしたたかが
顔を歪めてその場にしゃがみこむ。
腰に手を添えて、
顔を顰めてる。
西「Aっ！」
遠くで聞こえる、
私を呼ぶたかの声。
徹「Aさん…。
やっと…会えた。
ずっと、探してたんだ、俺。」
ゆっくり近寄ってくる徹くんが怖くて。
息が、できない。
「たか…っ、たす、けて…。
たか、たか…っ。」
声になってるのかもわからないけど、
たかの名前を呼ぶ。
徹「これを、返したくて。」
そう言った徹くんが私の手をとった。
抗うこともできず震える私の手に、
徹くんが乗せたものは。
私があの頃右手の薬指に嵌めていた、
指輪だった。
たかと初めて鎌倉へ行った帰りにくれたもの。
あの日、徹くんが私の指から外したもの。
それを貰った日、すごく嬉しくて。
キラキラ光るその指輪を行き交う車のライトに
かざしてた。
でも、そんな幸せな記憶よりも。
…あの人は助けになんてこない…
…もう俺のなのに…
あの時言われた言葉が頭の中に蘇る。
やっぱり、
この感覚からは逃れられない。
ずっと私に…付き纏う、の？
ぽろぽろと涙が落ちていっても
自分で拭うことすらできない。
徹「Aさん…。俺、
今も…ずっと。」
ぼんやりとした意識で
目の前の彼の言葉を聞いていた。
西「Aっ！
こっちを見ろ！俺はここにいるから！」
過去に飲み込まれそうになった私の耳に
たかの声が響く。
「たか…？」
ふっと意識が現実にもどると
ふらつきながら必死で私の方へ
手を伸ばすたかが見えた。
たかが、いる。
たかは、ここにいる。
私はひとりじゃない。
「…や、めて…っ！は…なして！！」
私は。
乗せられた指輪ごとその手を振り払って、
伸ばされたたかの手を握った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 621人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリィ(プロフ) - fukaさん» 出逢えてよかったって言ってもらえてとても嬉しいです。書いてよかったです！ありがとうございますー★ (2020年4月12日 15時) (
レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
fuka(プロフ) - 完結お疲れ様でした！ 前作から読ませていただき、何度も涙がこぼれました。切なさや悲しさ、喜びなど、たくさん感動したりして、すごく素敵なストーリーだったなと思います！ 終わってしまって寂しいですが、この物語に出逢えてよかったです！ (2020年4月5日 22時) (レス) id: 0f2ddad342 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - Yuiさん» ありがとうございます☆頑張ります！ (2020年3月31日 10時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
リリィ(プロフ) - ゆにしぃさん» コメントありがとうございます！また読見に来ていただけるようにますますがんばります！ (2020年3月31日 10時) (レス) id: 79af705402 (このIDを非表示/違反報告)
ゆにしぃ - 長編お疲れ様でした！このstoryは本当に大好きです！！（side story楽しみにしてます！） (2020年3月29日 12時) (レス) id: 2657bef5db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リリィ
| 作成日時：2019年12月1日 8時
