歩む道。5

229 side Nissy ページ29

Aの様子がなんとなくおかしいのは
気づいてた。



でも、
何も言ってくれない。




時折ぼんやりしてたり、
急に元気になってみたり。



と思えば、
昨日みたいに激しく乱れて。



本人は気づいてないけど、
寝てる間に涙を流してたり。


無理して笑ってるのもわかる。



Aが支度をしてる間、
食器を洗いながら
ここ最近のことを振り返っていた。



カチャリと食器を伏せて置くついでに
はぁ、とため息が溢れる。



西「待つだけじゃ、だめだな。」



話してくれるのを待っていたら、
手遅れになりそうな気もしている。



だけど。



聞いても、答えてくれなかったら？




そんなことを考えてると、




「支度できたよ？」



とAが部屋から出てきた。



いつもより、
おしゃれをして、メイクも髪型も、
少しだけ違う。



西「うん、かわいい。」



そう言うと、
出会った頃と変わらず、
赤くなる頬。




西「よし、こっちも終わった。



じゃあ、行こっか。」



「うん。」



車に乗って、街を抜ける。


信号待ちの交差点では
初売りの袋を持った人達が
たくさん歩いている。



「すごい人ですね。」



西「だな。


ね、Aはなんか欲しいものないの？」




「欲しいもの…ですか？」



西「靴とかバッグとか、洋服とか…？」




「んーそうだなぁ…。
あ、傘！


この前失くしちゃって…。


それから、
名刺入れ、新しく買おうと思ってるのと…。
新しい手帳カバーもほしいな。」




西「すとーっぷ！

仕事関係なし！
自分のためのもの！」



「…そうだなぁ…。」



そこからしばらく悩んだA。



「コート。


そう！
新しいコート、買おうと思ってたの。」



西「お！
いいじゃん、でも。


今日は無理だなぁ。」




「ですねー。
また時間見つけて行ってきます。」




西「一緒に見に行きたかったのに…。」



「また、いきま…、」



そう言いかけて、
黙ってしまったA。



西「A？」



「…あ、うん、


あの…そう！
また行ける頃には春になってるかも、
しれないなって。」


ぎこちないAの返事は
違和感しかない。

でも、



西「そうだな。


これからまた、休み無しだな。

ごめんな。」


そんなふうに返す。



「やだ、謝らないで下さい。


それより…」



どこに向かってるんですか？
と聞くA。

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