歩む道。5

223 side Nissy ページ23

「好きな人が、いるから。

ごめんなさい。」


なんか盗み聞きみたいになってる俺。
だめだよな、これ。

そう思って振り返ると、
そこには何故かさくらちゃん。

しーっと、人差し指を立てながら
近づいてきて、壁の向こうを伺う。



さ「告白タイムですねー。」



西「いや、聞いてたらまずいだろ。」



小声で会話をする俺達の事には気づかないのか、
向こう側から声が聞こえてくる。



・「それって…、西島さん、

じゃないですよね。」



「…え？」


突然出た自分の名前に驚く。



・「あの人が言ってた。


速水さんは西島さんに騙されてるって。
だから、気づかせてあげてって。


ホントは西島さんと
付き合ってるのはあの人で。


速水さんはいいように
使われてるだけだって…。


やっぱり本当だったんだ…
俺…
許せない。西島さんを。」



こいつ、何言ってるんだ？
俺と誰が付き合ってるって？



「なに、言ってる…の？
あの人って誰？



変なこと言わないで。
私は騙されてなんかないよ？」



・「じゃあ、俺と付き合ってください。」



「だからそれはできない。」



・「なんで？
髪切られた時も助けてあげたのに。


俺はいつも速水さんのこと
考えてるのに。」



「それは…」


ダンっと壁に手をついたような音と、
キャッと言うAの小さな悲鳴。



あいつ、おかしい。


そう思ってAのところへ行こうとした俺を
さくらちゃんが止める。



さ「ここにいてください。」


小さな声で俺にそう言って、
Aたちがいる方へ出ていく。


さ「何やってるの？
A、嫌がってるみたいだけど。」



・「告白してただけです。

じゃあ速水さん、
考えておいてくださいね。」



そいつはこっちに向かって歩いてきて、
廊下を曲がったところに俺がいるのに気づいて
驚いた顔をする。


でも真っ直ぐ俺の顔を見ていった。



「俺、速水さんが好きです。」



それだけ言うと、
スタスタと歩いて行ってしまう。


西「…おいっ！」


呼び止める声に振り向きもしない
そいつの背中を睨みつける。


何なんだ？



「西島さん？なんで？」

いつの間にか
さくらちゃんと並んで後ろにいたA。



西「姿が見えないから心配になって。


大丈夫か？」



無言で頷く
少しだけ強張った表情のA。



さ「でも、あいつなんか変だったよね？」



「確かに…変なこと言ってた…。」



三人で顔を見合わせる。


まさか、あいつ…。
また何かしようとしてる？

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