歩む道。4

186 side Nissy ページ36

東京ドーム公演一日目が始まる。


昨日のリハに出てないAはまず、
色んなスタッフさんに
不在にしたことを謝罪していた。



楽屋ではメンバーに順番に抱きしめられて、
困ったように笑ってた。



特に実彩子と千晃は
Aの短くなった髪を見て
かわいい、似合ってるなんて言いながらも
ポロポロ泣いていた。




当日のリハを終えて、
みんなそれぞれに過ごす自由時間。


ストレッチをしてる俺に
Aが話しかけてきた。




「やっぱりドームって緊張します？」




西「んー、どうだろ。

始まっちゃえばドームでもアリーナでも、
ホールでも。
同じかな。


そこに今いる人を楽しませたい。
喜ばせたい。

それだけ。」




そう答えると、




「予想通りな答えでした。」




西島さんの体は大丈夫ですか？


返事のあとにそう付け加えたA。




忙しいし、
やりたいことだらけだし、
Aは心配かけるし。
腰はだんだん悪くなってるような気もするし。



でも。



西「大丈夫。」


と答える。



待っててくれるファンの子に
俺の精一杯を届けたいから。



隣にはAがいるから、
頑張れる。




そう思っていた。





東京ドーム公演は、
2日間とも何事もなく、幕を下ろした。




衣装だって、演出だって
いま俺達にできる最大限のこだわりで。


公演が始まってしまえば、
俺もAも仕事モードに頭が切り替わるから、
余計なことは考えず、
ただ目のまえのことに集中できた。





そして。
ドーム公演を終えた俺達には
忙しい日常が戻ってきた。




グループとしても、
ソロとしても。



うまくいってる。
うまくやれてる。



レコ大のノミネートが決まり。
紅白出演が決まり。

新曲とアルバム発売のための
プロモーション。

例年通りNYPの打ち合わせも始まってる。



ソロでは、
テレビ出演に雑誌の特集。
追加公演のリハ。
追加のツアーグッズ。

新曲も春にでるし。

クリスマスにファンのみんなへ届ける
感謝の気持ちを
カタチにする準備も順調に進んでいた。


心のどこかに
小さな不安を抱えながらも
忙しく充実した時間が過ぎていた。


これから俺達は大きな波に
飲み込まれていくだなんて
俺の頭の中には全く浮かんでいなかった。

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