歩む道。2

90 side Nissy ページ40

村「私はきっかけを作っただけ。


自分が速水さんのポジションにつきたかったと
思ってる人はたくさんいる。

現に、速水さんを突き落としたのは、
速水さんの先輩でしょ？

まぁ、速水さんが
勝手に落ちたことになってますけどね。」


そうだった。
事務所内でのゴタゴタはタブーだ。
チーフも申し訳なさそうに、
俺に頭を下げた。

そして速水を突き落した奴は
あのあとすぐに退職したらしい。


西「でも、俺は本当のことを知ってるから。

原因をつくったお前を許せない。」


そう言うと、


村「いいですよ。許さなくても。

そうやって、速水さんと二人で私のこと、
考えててください。」


西「は？」


なんだこいつ？
そんなことを思ってると、
村上が話しだした。


村「あの人が。
ただ、マネージャーってだけなら、
ここまでしなかったかもね。

自分だけ
仕事も恋愛もうまくいくなんてずるい。
そんなの絶対に許さない。」


そう言って、
村上が自分のスマホを操作して、
俺に画面を見せた。

そこには、
唐沢が撮った
NYPの時の俺とAの写真。


こいつは、
俺とAが付き合ってることを知ってるんだ。
でも、なんでその写真を持ってる？


西「そこまで俺と速水にこだわる理由は何？」


村「私は…。

速水さんのこと、前から知ってたんです。」


西「え？」


村「私もピアノをやってたんです。。

無表情なのにすごい技術でピアノを弾く
速水さんのことを見たとき、
私と同じって思った。

コンクールの後、
楽屋で速水さんが、親に叱られてる姿を見て
私と同じって思った。」


微笑みを浮かべながら、
話しだした村上。


村「ある時から、
速水さんを見かけなくなって。
気になって調べたんです。

で、やっと。
ここにたどり着いた。


あの頃とは全く違う速水さんが
ここにいました。

そして、
この人は自由になったんだって感じた。


西島さんの隣に立つ速水さんは、
幸せそうだった。
仲間に囲まれてる速水さんは、
綺麗だった。


だから、許せない。

私は、ずっと縛られて自由じゃないのに。

だから、奪ってやるって思った。」


なんて言えばいいのかわからずに
いた俺に村上は更に続けた。


「私、辞めるんです。


もともと3ヶ月の約束だったので。

この後ニューヨークに留学して、
帰ってきたら親の決めた相手と結婚するんです。

そんなつまらない人生なんです。


だから。


私の欲しいものを持ってる人が、
羨ましいし、憎い。」

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