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"裏"の仕事が終わり、男が持っていたパソコンのデータを持ち帰るA。非常口から屋上へ出ると軽やかに高層ビルから飛び降りた。
「"店長"おまたせしました」
「やあ、おかえりA」
データの入ったUSBを手渡すと、店長と呼ばれた男は"今日はもう上がっていいよ"と微笑んだ。
「はい、おつかれさまでした」
「また明日」
そのまま、家へと向かうA、ふとショーウィンドウに並べられているぬいぐるみをみて思った。
「(そういえば、姉さんのところには義兄さんの連れ子のお子さんがいると言ってましたね…)」
まだ見ぬ姪に心躍らせ、今度会う時にプレゼントをしようと決めたのだった───。
「あれ?兄さん?」
「A、遅かったね」
自宅マンションのロビーに居たのは、兄であるユーリ・ブライア。先日の怪我(姉さんに殴られた)がまだ治っていないようで、痛々しい。
「どうしたの?来るなら連絡くれれば」
「Aは、彼氏とかいないよな?!」
「え?いないですよ、そんな方」
ずいっと顔を寄せ、妙な質問をする兄にAは皺を寄せた。ユーリはAの返事を聞き、ホッと胸を撫で下ろす。
「姉さんのことはもちろんだけど、ボクはAのことだって守るからな」
「兄さん…もしかして、酔ってる?」
うっすらと赤い頬、呼気から漂うアルコール臭、完全に酔っていた。
「酔ってらい」
「…呂律、回ってないですよ」
仕方ないとばかりにため息をつき、肩を貸す。よほど姉さんの結婚にショックを受けたのだろう。気持ちはわかるが、このままほっておくわけにもいかないと思い、部屋へあげることにした。
「とりあえず、頭の包帯替えましょうか」
「イテッ…A〜もっとやさしくして〜」
「優しくしてますよ」
これ以上にないくらい、そう付け足し包帯を巻き直す。
「兄さん、飲み過ぎです」
「だって、あんな料理できて気が利いて顔が少しいいだけの男と姉さんが結婚なんて…」
「それ、ロイドさんのこと褒めてますよ」
「褒めてなーい!ロッティなんかぜったい認めない!!」
「ロッティって…」
もうあだ名で呼んでますよ、と呆れるA。クローゼットから服を出しユーリに着替えとシャワーを促した。
「シャワーでも浴びて、酔いを覚ましてください」
シャワー室へ押し込むと、Aはソファへ深く座り込んだ。
「(今日は疲れました…)」
朝から働いていたため、瞼が閉じる。すぐに夢の中へ落ちていくA───
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作者名:神永 夕陽 | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/470/mushroom037/
作成日時:2022年6月1日 12時