～小さな世界～【永瀬廉】 (ページ4)

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「あとで食事、持って来ますね。」

返事が返ってこないとは分かりつつも

ここまでスルーされると

確かに心が折れてしまいそうだ。

「……」

いろんな覚悟を胸に置き、

私は一度この部屋を後にした。

って…

髙橋『わぁお！！』

「…なにしてんの。」

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部屋の前で

盗み聞きをしていた様子の海人。

髙橋『いや、ど、どうかなぁ？と思って。』

「心配なら交代する？」

髙橋『いや、マジで勘弁して…』

「もぉ。…今度奢りだからね。」

“それは任せてよ！！”

とニコニコ笑顔で敬礼をした海人は

スタスタとこの場を去って行った。

本当、調子いいんだから。

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「永瀬さん、食事持って来ましたよ」

ベットのサイドテーブルに食事を置く。

「……」

勿論、見向きもしない永瀬さんに

私はもう一度声をかけてみた。

「食事、摂らないと治りも遅くなります。」

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私の声は

この方に届いているのだろうか。

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永瀬さんは、

交通事故での外傷を伴った。

左足と左手にはぐるぐる巻きのギブスで固定され

自分で立ち上がるのも今は殆ど難しい状態。

それだけの事故であれば

例えばショックのあまり

声が出なくなる人

耳が一時的に聞こえなくなる人

断片的に記憶を無くす人も居て

もしかしたら

それのどれかではないかと

私は少し心配になった。

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「永瀬さん」

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「永瀬さーーん。」

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窓の向こうを眺める永瀬さんを

何度か呼んでみる。

「……」

フル無視だ。

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よし。

じゃあ今度は

ベットの反対側へ移動してみよう。

主に窓際の方へと向かう。

すると

真正面から永瀬さんのお顔を拝見する事が出来た。

「あのぉー。永瀬さん？」

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だけど、

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どこを見ているのか、

一向に永瀬さんと視線が合わない。

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毎日同じ景色であろう窓の向こうには

一体何があるのか

私も同じように覗いてみたけど、

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「…大した景色でもないんだよなぁ」

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結局この日は、

永瀬さんの謎を解く事は出来なかった。

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これは、長い戦いになりそうだ。

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