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永瀬『なんで朝は来てくれへんかったん？』
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ん？
んん？
ちょっと珍しく長文過ぎて聞き取れなかった。
「…え？」
永瀬『……。』
いや、聞き取れたんだけど。
まさかの言葉だったから。
なんで来てくれなかったのか、
そう言ってたよね？
という事は、
私を待っていた。
という認識でお間違いないでしょうか？
私は目をパチパチとさせて、
直球で聞いてみる。
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「…私の事を、待ってくれてたんですか？」
永瀬『……』
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しばらくして永瀬さんは
コクッと小さく頷いた。
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なんという事でしょう。
私はまた、違った感情が生まれたような気がした。
我が子が初めてよちよち歩きをした時
我が子が初めて言葉を発した時は
もしかしたらこんな感情になるのかもしれない。
育てた事はないけど、きっとそれに近い感情だ。
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私は、
またまたパイプ椅子に座り
永瀬さんの左手のギブスに触れる。
「…嬉しいです。」
永瀬『……』
まずは素直に。
自然と溢れた笑みを永瀬さんに向けた。
でも、このままではいけない事も
ちゃんと伝えなければならない。
何故なら。
「でも、毎日ここに来る事は難しいんです。」
永瀬『……』
なんで？
というように首を傾げて
私の次の言葉を待っている永瀬さん。
「私にだって休日はあります。
あと出勤をしていても他の業務があれば
私以外の看護師がここへ来る事もあります。」
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「…その度に永瀬さんは食事を摂らずに
お腹を空かしていると思うと、…私心配になります。
休日でも気が気じゃありません。」
私は永瀬さんの手を握るように
そっとギブスを持ち上げて、
「……ちゃんと食べて下さい。」
永瀬『……』
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すると、
私の手の上にそっと軽く体温がのしかかる。
それは、永瀬さんの右手だった。
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永瀬『分かった。』
「……」
触れられた所だけが、やけに脈を打つ。
永瀬さんの手は
やっぱりごつごつとした大きな手。
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永瀬『でも、なるべく来てな。』
「……」
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私は永瀬さんに
えらく気に入られたようだ。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年10月19日 11時
