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永瀬『…んふふふ』
「……これも、…駄目だね。」
永瀬『あれぇ？…おっかしいなぁ〜。』
“こんなはずじゃ無かってんけどなぁ”
なんて気まずそうに笑う廉と、私。
ご飯を食べて、
さっそく私達は外に出て花火を開始する。
はずだったんだけど…
永瀬『…これも死んでる。』
「ふふっ、そんな言い方しないであげて？」
きっと役場で見つけた花火は
去年の夏に売り出したかった物なのか
どれも湿気て、火が付かないの。
永瀬『…なーんで湿気てるやつ俺に売んのよ。』
「はははっ！！まぁまぁそう言わずに。」
こんな事もあるさ。と言うように、
私は廉の肩をポンポンと優しく叩いてあげた。
でも、
しょんぼりと廉は俯いたまま。
「そんなに落ち込まなくても、」
永瀬『A。』
「ん？」
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永瀬『俺、』
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永瀬『5月末に、ここ出るわ。』
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湿気た線香花火を持つ手は
一瞬で力を失い、
ヒラリとそれは土に落ちる。
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分かっていたはずの終わりが
もう、すぐ目の前にあった。
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「………。」
永瀬『………。』
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あえて二人の関係に名前を付けなかったのは、
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「…そっか。」
永瀬『…うん。』
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別れが来るとお互い分かっていたから。
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ほろほろとこぼれる私の涙を、
廉は優しくキスで拾う。
「……っ……」
永瀬『……泣くなよ。』
私がこうならないように、
少しでも雰囲気を柔らかくしようと
買ってきたであろう花火が、虚しくて。
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霜が多いこの村に星空は珍しく
今日の夜空はいつもに増して
綺麗に澄み渡っていた。
見渡す限り宝石のような星屑が
私達二人を優しく見守って
「……すぐ泣き止むから」
永瀬『……』
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廉はとても苦しそうな表情をしながら
私の首に手を添えて
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永瀬『…ごめんな。』
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そして私達は
今までで1番切ないキスをした。
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別れのカウントダウンが始まる
悲しみに包まれた、
そんな冬の終わりだった＿＿
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月19日 1時
