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布団の上で正座をした男は
2階へ上がろうしている私を引き止めた。
『あのぉー…名前、聞いていっすか？』
先に名乗るのが筋でしょーが。
と、心の奥でムッとする。
だけど、それを表には出さずに
「私は、…A…です。」
『…A。Aちゃんか。』
名前を知った男は、
覚える為なのか、何度か私の名前を呟いた。
だけど、
一向に自分の正体を明かそうとしない男に
私も黙ってはいない。
「私も、聞いて良いですか？…名前。」
『…えっ！？』
「え？」
ごく自然な流れで聞いたつもりなんだけど、
男は何故か驚いた顔をする。
「…何か？」
『…ふふふっ…あぁ〜、いや。なるほどね。』
そして今度は、
少しだけ嬉しそうに笑っていた。
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なんだね、さっきからこの男は。
不思議なオーラを醸し出し、
謙虚のようで、少し厚かましさも兼ね備えた
本当、不思議な
『廉。』
「…え？」
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永瀬『永瀬廉です。』
「…あー、名前。…れんさん。」
永瀬『んふふふ、はい。あっ、廉でいっすよ。』
ニコニコと、
さっきから何が嬉しいのか、
ずっと頬が緩みっぱなしの、この人。
廉さん。
もう明日には居なくなるので、
呼び捨ては、やめておきます。
「…じゃあ、…ゆっくりお休み下さい。」
永瀬『はい。Aちゃん、おやすみ。』
「……。」
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2階へ上がり、
小さなスペースに敷いてある寝床に
私は、仰向けに倒れ込む。
「…はぁ…」
なんか、疲れた。
変わらない毎日を、
私のペースを、
なんだかあの男に乱された気分だ。
まぁでも、
訳ありな雰囲気はあったものの
悪い人では無さそうだったし。
明日にはまた、赤の他人になる訳だし。
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でも、
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＿＿Aちゃん、おやすみ。
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なんだろう。
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ちょっと、
懐かしい気持ちになった。
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「…おやすみ、…か。」
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月15日 10時
