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永瀬『A、あかんで。』
私の肩に埋もれるように顔を沈めたまま
廉は話し続ける。
「…なにが。」
永瀬『俺の気持ちに気付いてるやろ。』
「……。」
もう、伝わりすぎるくらい
露骨に態度に現われる廉の愛情表現。
それは
出会ってすぐの時から
割と早めに気付いていた私。
それは自分の想いも含めて
知らないフリ、気付かないフリをして
今の今までやってきたのだけど。
永瀬『本間ずるい。』
「…廉は、気付いてないの?」
永瀬『なにが。』
「……私の気持ち。」
永瀬『気付いてる。』
なんだそれ。
じゃあ、お互い様じゃん。
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ゆっくりと顔を上げて
寒さと恥ずかしいとで頬を真っ赤にした廉が
私を見つめる。
私も、目をそらさない。
お互い、瞳の奥を見据えて。
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永瀬『……戻ろか。』
「うん。」
永瀬『家戻ったら気が変わってるとかないよな?』
「…ないよ。」
永瀬『まぁ、変わってても逃がさんけど。』
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逃がさないで。
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帰りは、
とても静かだった。
お互い一言も話すことなく
来た時に出来た足跡をひたすら辿って。
でも、
しっかりと握られた手には
いつも以上に力が込められた。
ゆっくり、一歩一歩踏みしめて
白い息を吐きながら肩を寄せ合い
同じ場所へと帰る、雪の道。
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そして、ようやく家に着き
ガラガラ〜と引き戸を開けると、
既に準備をしておいた薪ストーブのおかげで
家の中は暖かい。
玄関で座りながら長靴を脱ぐ私達。
脱ぎ終わった私は
立ち上がろうとした時、
「…わぁ!……っ!!……」
下から手首を引っ張られ
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そのまま吸い寄せられるように
廉のキスが始まって。
私は、再び廉の胸を叩き
軽く突き放す。
永瀬『…なんでよ。』
「…この格好でするの?…しかもここで?」
永瀬『Aの気、変わるかもしらんやん。』
「…変わらないってば。…お風呂も入りたいし。」
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__じゃあ一緒に入る?
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だんだん外の、
霜が鋭くなってきた。
良かった、早くお家に戻ってきて。
氷を粉末にしたような雪が顔に当たると、
あれ痛いんだよなぁ。
さ。
廉も私も
早く身体を温めないと、
そろそろ風邪引いちゃうね__
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作者名:ayu | 作成日時:2020年9月15日 10時