検索窓
今日:4 hit、昨日:37 hit、合計:511,435 hit

40 ページ40

.






下を向いたまま

テーブルの椅子にちょこんと座る廉。






私は黙って

机の上にコトッと湯呑みを置いた。






永瀬『…ありがと。』






手を温める為なのか

廉は両手でそれを持ち、

湯呑みの中をじっと眺めている。






.






「…風、止んだみたいだね」


永瀬『……。』






いつの間にか

嵐は過ぎ去っていた。






だからか。

家の中がとても静かなのは。






.






.






.







永瀬『俺のこと嫌いなった?』


「え?」






すると廉は

未だ下を向いたまま、小さく声にした。






.






永瀬『ごめん。』


「……。」






.







まるで悪い事をしたみたいに

暗い顔をして一切こちらに目線を合わせてくれない。






「ねぇ、廉?」


永瀬『……。』


「こっち見てよ。」


永瀬『……見られへん。』






意地でも顔を上げようとしない。






.






「ふふふっ、…なんでよ。こっち見て?」


永瀬『無理。』






私、

こんなに真面目な人。

初めて見たかも。






.






「じゃあ、そのままでいいや。」


永瀬『……。』


「嫌いになんて、なってないよ?廉のこと。」






.






湯呑みを持つ廉の手が

ピクッと反応する。






.






「…キスってさ。」


永瀬『……。』






.






「悲しい気持ちになった時にするキスって、

なんか良いよね。絶対にそんな事ないんだけど、

でも、ちょっとだけ分け合えた気にならない?」






共有し合って、それが愛に変わるの。

さっきのキスは、なんかそんな感じだった。

よく分かんないけど。






「…ふふっ、黙ってないでなんとか言って」


永瀬『俺は違う。』


「……?」






.






すると

廉はゆっくりと顔を上げて

今度は私を真っ直ぐに見つめて言う。






永瀬『俺、そんな無責任な事をしたつもり無いよ。』


「…ん?」






茶色い瞳は徐々に鋭くなって

言葉に芯を深める。






永瀬『嫌な事を忘れる為にとか、

Aでそれを埋めようとかはマジで一切ない。』






.





.






「……。」


永瀬『……ただ、…Aとしたかっただけです。』






.






その夜は

少しだけ夜更かしをした。






お茶を飲みながら

落ち込んだ廉が元どおりになるまで

ゆっくり、時間をかけて。






「明日起きれるかな?」


永瀬『…朝から雪掻き?』


「…ふふ、嫌なの?」


永瀬『んふふふふ、…いや、…頑張る。』






.

41→←39 Ren side



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (497 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1228人がお気に入り
設定タグ:永瀬廉   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ayu | 作成日時:2020年9月15日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。