6 ページ6
.
予想はしていたけれど、
今日の日直の仕事は殆ど私がした。
号令も、授業終わりの黒板消しも、提出物の回収も全部。
心の中では沸々と。
しかし、
人とのコミュニケーションは朝の挨拶で限界な私。
そんな私が、意見を言える訳もなく
しれ〜っと一日が過ぎていった。
6時間目の授業も終わり、
私は学級日誌を両手で抱きしめる。
友達と群れて帰ろうとする永瀬くんを見つめて。
.
「…って………」
日直は私だけじゃない。
別に良いけど、
…でも、…よくない。
.
.
「…永瀬くん、待って！」
永瀬『……』
.
永瀬くん、そして周りの群れも一斉に私を見る。
まるで汚らわしいものを見るみたいに。
永瀬『なに？』
「……ぃや、…そ、その。…」
永瀬『……』
「…日誌、まだ書けてないよ」
.
…い、言えた。
言えたよ！
私が、この私がちゃんと
永瀬『で？』
「へ？」
.
この冷ややかな瞳で、私は簡単に怯む。
だって、…怖いんだもん。
しかし声をかけたからには、最後まで。
再び私は、震える声を絞り出す。
「…な、永瀬くんも、…その、日直だから」
永瀬『やっといてや』
「……え？」
永瀬『じゃ』
それだけ言って背を向ける永瀬くんと
クスクスと周りの嫌な笑い声が私に向けて鳴り響く。
.
なぜ私が屈辱的な思いをさせられるのか。
正しいことを言って笑われる
そんな事があってもいいのだろうか。
と、
今日の私は、ちょっとだけ粘っこい
「…ま、待って！！」
.
.
思わず、私は永瀬くんの腕を掴み引き止めた。
.
「…あの、」
永瀬『お願いやから触らんといて』
「…あ、ごめんなさい。…で、でも」
永瀬『今日さ、』
.
永瀬くんは私の言葉を冷たく遮った。
そして、
.
永瀬『親父が死んでん。』
.
.
.
……え
永瀬『それでも残った方がいい？日誌、やっけ？
まぁ、事情が事情やからなるべく帰りたいねんけど俺は。』
.
…そ、そんな事が。
私、最低だ、…それならそうと早く
「…すいませんでした。事情も知らず」
永瀬『……』
「日誌は、その、私が書いておきます！それより早く」
永瀬『…ふっ……』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1368人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayu
| 作成日時：2021年1月31日 1時
