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視界が揺れる。
薄透明な膜で覆われ、瞬きをすればそれは
一瞬で大粒となってこぼれ落ちた。
永瀬『…俺、お前泣かすような事言ったっけ』
「…っ、………っ、……」
永瀬『なぁって、……泣き止め鬱陶しいから』
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手の甲で何度も何度も目を擦る。
しかし何度拭っても追いつかない涙。
永瀬くんは気怠そうに髪を掻く。
しばらくして痺れを切らすかのよう
紺色のハンカチを私に投げつけてきた。
永瀬『拭け、とりあえず。』
「…っ、あ、……っ、……がとぅ……っ、」
永瀬『…んやねん、急に。』
珍しく永瀬くんは黙ったままだった。
携帯も触る事なく、じっと。
私が収まるまで、泣き止むまでを
待ってくれているかのように。
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「…これ、洗って返します……」
永瀬『当たり前や。』
ようやく涙は引っ込んだ。
びしょ濡れになったハンカチをバックにしまう。
未だ涙の余韻でしゃっくりを繰り返しながらも
私は、やけに静かな永瀬くんに
これだけは言いたいと思っていた事を口にした。
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「永瀬くんは、永瀬くんでしょ…」
永瀬『…？』
「……もっと、大事にして。自分のこと」
永瀬『……』
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「…如月さん、ありがとうございました。」
如月「いえ、…ゆっくりお休めになって下さいね」
「はい。…永瀬くんも、バイバイ」
永瀬『……』
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あー、今日は疲れた。
お風呂に浸かって身体を温めよう。
腫れた目元も冷やそう。
＿＿金持ちの家で育った俺が好きなだけ。
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私が泣いた理由は、
自分でも結局分からなかった。
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作者名：ayu
| 作成日時：2021年1月31日 1時
