不器用なりに (ページ9)

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9 You side. ページ9

私があの場所へ着くと、既に先客がいた。
昨日の男の子だった。

昨日は白いTシャツに黒いマスク、
大きいリュックを背負っていた。
今日もあまり変わらない格好。
堤防に座り音楽を流している。
なんだろう...英語の曲？

私が歩み寄ると、バッと後ろを振り返った。
大きくて丸い目がさらに大きくなっている。

「あ、こんばんは...」

私がそう言うと、
彼が頭を下げる。

何かよくわからない、恥ずかしさがある。
気まずい。

私が堤防を登ろうかと迷っていると、
彼は慌てた様子で手を差し出してきた。

「あっ僕もう帰るんで...」

そう言いながら私の手を引いて、堤防へ上げてくれる。
華奢だと思っていた体に力強く引かれると、
少し胸が早くなる。

「いや大丈夫ですよ!!
本当に帰るところならあれですけど...
あっ...!私が帰りましょうか！？」

鼓動が早いせいか、つい早口で話してしまう。
すると彼は「いやいやいやいや！！！」と言いながら顔の前で手を振る。
私も「いやいや..」と言いながら両手を振った。

冷静になると、二人して何してるんだろう
と、おかしくなってくる。
私が堪えきれず吹き出すと、彼も笑い出した。

「いひひひ」

か、変わった笑い方をするね...笑
ひとしきり笑ったら、自然と二人とも腰を下ろした。