たくさんの気持ちを君に。

啓太の恋。 ページ34

Aが、あの頃の笑顔に戻った。




“じゃあ報われない同士、同盟組もう！”




そう言って、仲良くなった俺たち。





なんで、こんな切ない思いしてるんだろうって

あの頃の俺たちはそう思ってたけど今思えば、

すげー青春してたんじゃないかって。





今となっては、昔話。






「Aの純粋なときから腐った今まで
見てきたけどさ、」



「もう、腐ったって何よ。」






Aにはそう言ってたけど、

本当は自分が１番腐ってるんだ。





純粋に人を想って、生きてきたと思ったのに。





Aがこんな風にならなくてよかった、って

まだ思えるってことはまだ戻れる可能性ある？





だけど、やめられない。








「…………じゃあ、また連絡するわね」


「…………美嘉さん、俺」


「じゃあ…、主人が待ってるから」






ずっと好きだった人と結ばれた。

赤くない、表には見せられない糸で。






「……………寂しくて、」





その一言につけこんだ。






初めて肌に触れた時、

“やっと手に入れた、”

そう思ったと同時に

大切なものを手放したと思った。






いわゆる不倫、ってやつ。


彼女と寝たのは何回目だろう。


繋がってるようで、繋がってない。





そんな時なぜかAと話したくなる。


無垢だったあの頃の俺に戻れる気がするから。







そう思って電話をかけたある日の夜の事だった





(あのね、実は裕太と…………、)




遠慮がちに話してるけど、

声は温かくて、幸せそうで。






スタートは一緒だったはずなのに、

俺、どこで間違えた？





うまく返せなくて。





次に聞こえて来たのは、




(あー、啓太？)




大学のとき、憧れてた玉森先輩で。




男ながらにすげー憧れた。

外見ももちろんだけど、物腰とか考え方とか。

Aのこと、泣かせたこと以外は。






だけど責め立てる俺にうろたえもせずに、


最後に、





“これから証明していくから、”




そう言った玉森先輩は、
相変わらずかっこよかった。

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