たくさんの気持ちを君に。

娘さんを下さい。 ページ28

もうすぐ着くから、

手を握って、Aの前に立つ。



「そんなに変な人なの？」


「だって手前の家から一件一件見て回ってるんだよ？今ごろうちかも。」


「え、怖いね」



「だから、ちゃんと後ろにいて。」




ブンブン、って頭振って
俺にしがみついたA




目線の先には、……………やっぱりいた。




しかも、Aんち。








しかも掛けてある傘を手にとって

じーっと見つめてる。






「今、Aんちの前いる。」

「えっ、やだちょっと、」

「とりあえず俺んち入ろ。」



さっきよりも力込めて手を握る。






うちのドアの前にたどり着くと、

気まずそうに傘を戻したおっさん。





「なにかお隣にご用ですか？」

「ちょ、裕太やめた方がっ、」




シャツの裾ちょいちょい、って引っ張って

後ろで慌ててる。







「成田Aのお宅はここですか？」




……………狙いはA？


とっさにAを
完全に見えなくなるまで隠す。




「あの、さっきからずっといますけど
これ以上いるなら警察呼びますよ？」



「べ、別に怪しいものじゃ………」




人の彼女の傘もって眺めるなんて
充分怪しいじゃん。






「A、入って」



「……………A？」




………………やば、名前きづいた？




「Aか？」



こっちに近づいてくるし。





「入って、早く」


「……………待って、」


　

玄関へ押し込もうとしたのに、

Aの足動かないし。





「待ってって………、」



「裕太、この人………」



「だから変な人いるって、」



「変な人じゃないよ、」









「A、そいつが彼氏か？」









「……………え？」






サスペンスみたいに動いてた時間が
ピタッと止まる。







「…………私の、お父さん。」







………………………まじか。

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