たくさんの気持ちを君に。

娘さんを下さい。 ページ26

yuta side





“お父さんがね、会わないって。”






ごめんね、ってぽろぽろ泣きながら

謝るAを宥める。

お父さんの反応は当たり前かなーって。

だって、こんないい子が嫁に行くんだよ？

もし俺が同じ立場だったら、

無理矢理家に閉じ込めちゃうかも。

“パパと結婚するって言ってたじゃないか！”

……………とか言っちゃって。




うちは、




「ゆうはいい人いないの？
お隣のけんちゃん、結婚するって」




この前久しぶりに
電話きたと思ったらその話題。





「この前プロポーズした。
OKもらったから、今度紹介する。」






電話越しに耳が痛くなるような
びっくりした声あげて、“お父さん！”って
父さんにさっそく言ってるし。




代わった父さんが、
“ずいぶん急だな”なんて言うけど、
いちいち親に報告しなくない？





ふたりとも楽しみにしてくれて、
母さんは、“どんな子かしら”って
気が早いけど、喜んでる。





きっと、うまくいくよ俺の家族とも。





Aのお父さんの反応は

予想範囲内だとして、

さて、これからどうしようかな。





大事に育ててきたAを、

必ず幸せにするってこと伝えなきゃ。





てか、正直なこと言っていい？

A泣かせちゃダメじゃん。

お父さんも結構な溺愛っぷりだけど、

俺も結構な感じよ？







「私、もう一回…………、



「A、電話貸して。」



俺の手にスマホ置いたAの瞳は

不安そうで涙がたまってて、

それをそっと拭ってやる。





ディスプレイには、


“お母さん”の文字。





(もしもし？A？)




電話から聞こえる声が、

Aそっくりでびっくりする。




「あ、こんばんは。
Aさんと、お付きあいしている
玉森裕太と申します。」



「えっ、ちょっ、」





Aがびっくりして肩揺すってくるのを

まぁまあ、って、宥めて。





(いつも娘が御世話になっております！)





Aのお母さんと電話。

そっくりの声と口調にすっかり安心して。





「あ、はい。………ふふ、
こちらこそよろしくお願いします」




(裕太くん、主人を一緒に説得しましょ！)




味方につけることに成功。笑





「はい、さんきゅー。」



「信じられない…、お母さん味方につけた…」




ずっとびっくりしてるAに

電話返して、






「まずは、味方だね。」





………さ、お父さん認めてもらいますよ？

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