♯28 ページ31
お礼すら言えずに、もう暫く会えなくなってしまった。
そう、思い込んでいた…よく知る親友。
彼は、何時も着ていたエプロンも着ずに…見慣れないスーツ姿で社長のとなりに控えていて…
何時もと変わらぬ笑顔を浮かべている。
そう…
何時も、疲れ果てて帰ってくる自分を出迎えてくれる時の…あの優しい笑顔を。
だからこそ、海は無性に悲しくなった。
自分が不甲斐ないせいで、また尊を心配させてしまって…
彼をまた、自分の都合に巻き込んで…彼の自由を奪ってしまったのではないか。
彼自身の夢を、捨てさせてしまったのではないか。
そう感じずにはいられなかったからである。
しかし、そんな海の気持ちはお見通しであるらしい。
「良かった。顔色も良い…体調、少しは良くなったみたいだね。」
社長の元から進み出、海の顔色を見ると…額に手を近付け…
『…いっ!』
デコピンをした。
不意打ちでされたこともあり、中々に痛い。
思わず瞑ってしまった目をゆっくりと開けると…
そこには、呆れたような顔をする尊の姿のみがある。
そして、そんな尊は海に語った。
「優しい海くんのことだから、僕がここにいることに関してすら…理由を深読みして、責任を感じているんだろうね。」
「でも…そんな必要は本当に無いんだよ。僕は、僕の夢のためにここにいる。そして…その夢には、君が必要なんだ。」
自分がここに居る訳を。
「僕は君の大ファンだよ。だから…君が夢を叶えて最高に輝く瞬間が見ていたい。それが僕の夢だ。その夢を叶えるためにも、君には輝いていてもらわないといけない。そのサポートをすること以上に、その夢を叶える近道なんてない…そう思わないかい?」
今まで、海の夢を叶えようとするばかりで…聞かせてくれることがなかった、尊自身の夢を。
心底誇らしそうに。
「君が僕を嫌がったって無駄だよ?僕は僕の夢のために君の側にいる。今までみたいにずっとは無理でも…君を支えてみせる。これは僕にしか出来ないことだ。」
そんな、何時もと変わりない尊の様子に…海は安心したのか、呆れたのか…
『…勝手にしろ。今も昔も…お前は変わっていない。…人の話を聞かないあたりとかな。』
彼もまた、何時も尊に接する時のように言った。
もう2人の間に、遠慮のようなものは消え失せている。
あるとするならば…
「こらこら、君たち。2人だけの世界をいきなり展開しないで、僕たちのことも仲間に入れてくれないと話ができないよ。」
他の者の侵入を良しとしないとすら思わせる…強過ぎる絆くらいのものだろう。
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月(プロフ) - キャベツの芽さん» はじめまして!コメントありがとうございます!尊くんもちゃんと受け入れられていて、大好きだと言ってもらえる程だと知れて安心しました!本当にありがとうございました! (2019年5月24日 17時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
キャベツの芽(プロフ) - 初めまして|´-`)チラッ海くんも尊くんも大好きです!!これからも楽しみにしております!! (2019年5月24日 14時) (レス) id: 270caf8b44 (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - Suiさん» コメントありがとうございます!これからも海くんのことを温かい目で見守ってくださればと思います。 (2019年3月26日 23時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
Sui - 続きがすっごい気になります!更新頑張って下さい! (2019年3月26日 21時) (レス) id: 8fe2495ae6 (このIDを非表示/違反報告)
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