♯1 ページ2
「…ここか。」
スーツをきっちりと着こなし、片手にメモを持った男性は何度もメモと目の前にある古びた建物を見比べた。
そこは、もう随分と前から使われていない…小さな音楽ホール。
未だ管理者が生存しているが故に奇跡的に残されているだけの、ただのハリボテとも言える建物である。
男性、『小鳥遊 音晴』はこの建物の管理者である老人を訪ね…住所を聞き出し…
この使われていない建物をよく訪れるとある人物に面会するがためだけに…芸能事務所社長という多忙な立場であるというのに、仕事を休んでこの地へやってきた。
「ここに、来ているといいけど。」
しかし、青年が確実にここにいるとは断言は出来ない。
彼もまた、多忙であり…色々な用事事を済ませるがため様々な地を点々としている。
ここは、そんな彼が訪れる拠点の一つに過ぎないのだ。
そんなことを悶々と考えながら…ホールのロビーを抜け、ホールに繋がるドアに近付きつつある時である。
この、古びた無人のホールでは聴こえるはずのない…
完璧に調律された、優しく甘やかなピアノの音色が響いてきていた。
「…どうやら、僕は当たりくじを引いたみたいだね。」
その様子に、満ち足りた表情で音晴はホールへと入っていく。
目的の人物はすぐそこにいる。
青年は、その日もピアノを弾いていた。
午前だけで講義が終わったことをいいことに、逃げ込むようにホールを訪れ…
思うがままに、鍵盤を叩く。
日々募り続ける、様々な汚れた感情を洗い流すように。
訳があり、あまり人に顔を見せる訳にはいかない彼は普段から深くフードを被り生活しているが故に息苦しく…
人より頭一つ分以上に優れた才覚を持つが故…担当の教師に過度な期待を寄せられ…他の生徒に妬まれ…
精神的にも身体的にも日々限界と戦っている彼にとって、その時間は不可欠だったから。
しかし、今日は一人観客がいたらしい。
集中して弾いていたため気づかなかったが、使われていない無人の客席から一人分の拍手が送られてきている。
こんな時ぐらいは、と外していたフードを急いで被り直し…そちらを見ると…
見覚えもない、スーツ姿の男性が人の良さそうな笑顔でこちらを見ている。
「こんにちは。七瀬 海くん、だよね？僕は小鳥遊 音晴。一週間前…君にスカウトさせてほしいと手紙を送った者だよ。」
男性がそう名乗った途端、彼は被り直したフードを急いで外し…
『…その話は、至極丁寧にお断りしたはずだが？』
と、人をも殺せそうな瞳で…青年『七瀬 海』は音晴を睨みつけた。
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月(プロフ) - キャベツの芽さん» はじめまして！コメントありがとうございます！尊くんもちゃんと受け入れられていて、大好きだと言ってもらえる程だと知れて安心しました！本当にありがとうございました！ (2019年5月24日 17時) (
レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
キャベツの芽(プロフ) - 初めまして|´-`)ﾁﾗｯ海くんも尊くんも大好きです！！これからも楽しみにしております！！ (2019年5月24日 14時) (レス) id: 270caf8b44 (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - Suiさん» コメントありがとうございます！これからも海くんのことを温かい目で見守ってくださればと思います。 (2019年3月26日 23時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
Sui - 続きがすっごい気になります!更新頑張って下さい！ (2019年3月26日 21時) (レス) id: 8fe2495ae6 (このIDを非表示/違反報告)
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