４太刀目:青年の正体♯ ページ6
No side
青年が目覚めた直後、水樹は香澄を寮外へ連れ出し…
香澄「刀剣、男士…？」
遠くを見つめながら…静かに告げる。
水樹「…あぁ。間違いない…昔、親父が連れてた奴と同じ気配がした。」
何処か、悲しそうな顔をして。
水樹「…彼奴は、人間じゃない。物に宿りし神…立派な付喪神だ。…そのうち、彼奴を探して奴等もやってくるだろう。」
水樹「香澄。お前にとっては酷なことかもしれない…でも受け容れろ。」
そうして、水樹は香澄に突きつけた。
水樹「…彼奴を、奴等が…政府が来るよりも先に政府に差し出せ。じゃないと…お前が危ない。」
香澄「…っ。」
他でもない、香澄の安全を守るために…傷ついた彼を見捨てるという…
自分の残酷すぎる答えを。
ーーーー
刀剣男士『山姥切長義』を拾ったあの夜から一週間が経過した。
香澄「長義、包帯を取り替えるぞ。ほら…刀から手を離せ。服はもう自分で脱げるな…？」
長義「！…また来たのか。良い！その程度のこと自分で…っ」
水樹に見捨てろと言われたのにも関わらず…長義は未だ、2人が暮らす寮の部屋で静養している。
香澄「深い傷が…未だ痛むだろう？無理をしたら、大嫌いな人間ばかりが住まうここから出られる日も遠くなる。大人しく手当されていろ。」
長義「…ッチ。」
香澄「…良い子だ。すぐに終わらせるからな。」
ここ数日で長義の扱いには慣れたらしい…香澄に看病されながら。
水樹「…ただいま。…まだいたのか、其奴。」
香澄「水樹…！傷の治りが悪いんだ。傷が治るまではここから出せない。」
水樹「…其奴の本体は刀剣だ。刀剣の状態が悪い限り傷は完全には治らない…刀剣を元に戻せるのも審神者だけ。…傷の回復を完全なものにするのは、ここでは不可能だ。」
水樹「…政府になら、完全に傷を治せる審神者もいる。其奴を思うなら…政府に差し出すのも手だと思えよ…香澄。」
水樹は変わらず、長義を政府に差し出すことを勧めているものの…
香澄「…そうか。でも…俺は長義がそれを望むまではここに置く。長義の傷が、今より良くなってから…望む場所に連れて行ってやりたいんだ。」
香澄がそれを拒み続ける為…実行には移されてはいない。
時の政府は世界の平和を守るべく戦う英雄の組織として扱われているものの…実際はそうでないと知っている香澄は傷ついた長義をそこに差し出すのが心配でならないからなのだろう。
香澄は優等生ではあるが、自分が間違っていないと思っている限りは人の話を聞かない。
自分の意見を曲げない、という頑固な一面も持ち合わせいるのだ。
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