At that time11-2* ページ32
朱のナビゲーションの元、地下鉄のホーム跡に入る。
傍にはゴミがたまり中も暗い。
誰もいないことを確認しながら先に進む。
『誰かいますか?』
「…いいや」
かすかに、嗅ぎ慣れた匂いがした。
『その奥は_____』
「…おい?」
ノイズの音がして声が一瞬、聞こえなくなった。
何度か呼びかけると、また聞こえてきた。きっと電波が繋がりにくいのだろう。
『――感度良好。そのまま進んで下さい』
「はぁ…なんだこいつは?」
『破棄された地下鉄路線です。車両を捜索して下さい』
電車についた手すりに摑まると、突然動き出した。
そのまま速度は変えずに突き進んでいく。
開いていた扉は閉められ水で退路を塞がれる。
「おい監視官!何がどうなってる!?」
『廃棄された地下鉄路線です。車両を捜索して下さい』
「……っ」
朱の声が繰り返し流れる。
これは朱のものではない。得体の知れない者が作りだしたニセモノだと。
車両のドアを開け、中に滑り込んだ。
辺りを見渡すと運転席に座らされた女の姿。しかも何故か肌着だけだった。
紙袋を外せば若い女の顔が見えた。
「ひっ…!」
「安心しろ。公安局の刑事だ」
「…あ……」
公安局だと分かるとすぐに落ち着く。
これだと状況もよく分かってない様子だ。
「あんたは?」
「船原ゆきです…」
「常守朱の友人?」
「朱を知ってるんですか!?」
彼女は船原ゆき、と判明した。
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作者名:Mermaid | 作成日時:2017年7月28日 21時